本当にあった野菜裁判と法的判断|トマト・スイカ・キュウリはなぜ問題になった?
裁判は基本的に人間を裁くもの、少なくとも筆者はそう認識しています。
しかし、「トマトは野菜か果物か?」この問題は本当に裁判で争われた記録があります。
また裁判まで発展しないまでも「スイカは甘いのに野菜か?」「キュウリは漬けただけで別物になるのか?」実はアメリカでは、こうした野菜に関するもめごとで、法的判断が必要となった例もすくなくありません。
しかも争点は植物学的な内容ではなく、税金や法律上の扱いについてという学者泣かせのものばかり…
本記事では、アメリカで実際に起きた3つの野菜に関する法的トラブルをご紹介します。

なぜアメリカでは「野菜」が裁判になったのか
アメリカで「野菜」が裁判になる最大の理由は、食文化ではなく制度が分類を求めたからです。
19世紀後半から20世紀にかけて、アメリカでは輸入品に対する関税制度が整備され、野菜には課税、果物には非課税、あるいは税率が異なるケースがありました。
そのため、トマトのように果実でもあり野菜のようにも使われる作物は、どちらに分類されるかで税額が大きく変わる重要な存在だったのです。裁判で問われたのは植物学的な正しさではなく、「人々が日常でどう扱っているか」。料理の付け合わせか、デザートか、といった生活上の常識が判断材料となり、結果として野菜や果物が法廷で定義される事態が生まれました。
トマト裁判|最高裁まで争われた「果物か野菜か」
1893年、アメリカ連邦最高裁で争われたのが有名な「トマト裁判(Nix v. Hedden)」です。
当時、野菜には関税が課され、果物は非課税でした。当たり前ですが、誰も余計な金など払いたくないのです。
輸入業者は「トマトは植物学的に果実である(果物である)」として非課税を主張。一方で、税関側は食卓での使われ方を理由に野菜だと反論しました。
食卓での使われ方とは「サラダとして食べるものは野菜」「デザートとしてだされるものは果物」のような、日常的な食べ方による住み分けだと考えてください。
最高裁は「一般的な感覚での理解」を優先し、トマトは野菜であると判決を下しました。
学術的正しさよりも、日常感覚が法的判断の決め手となった象徴的な裁判のひとつとして知られています。

スイカは野菜?|甘いのに「公式野菜」になった理由
スイカが野菜であるかは裁判にまで発展したわけではありませんが、こちらもアメリカで法的判断が下された例が存在します。
2006年にアメリカ・オクラホマ州で「州の公式野菜」に指定されました。理由は、スイカを地元農業と深く結びつけ、生産、販売を活発化させる目的です。
植物学的には野菜であることが知られているスイカですが、先程のトマトの例を挙げると「デザートとして食べるものは果物」となります。
そのため、先程の1893年「トマト裁判」とは真逆の結論に達したのが本件です。この事例は、分類が地域文化や制度によって決まるケースの代表とされています。

キュウリとピクルス|どこから野菜で、どこから加工品?
キュウリはどこまで手を加えたら「野菜」ではなくなるのか?こちらも裁判発展には至りませんでしたが、法的判断がくだった論争のひとつです。この問題の争点は「野菜かどうか」ではなく、加工の境界線です。
問題視される理由は例によって関税の存在です。当時アメリカでは生鮮野菜と加工食品で関税率が異なりました。そのため、キュウリの酢漬けである「ピクルス」が、野菜なのか加工品として扱うのかにより関税の額が変わってしまうのです。
結果、「ピクルスは加工食品」ということになりましたが、切る・漬けるといった行為が、法的な分類を一変させた例です。

これらの事例の意外な共通点
これらの事例に共通するのは、科学的な分類がほとんど決定打になっていない点です。
裁判や制度が重視したのは、日常的な食べ方や文化的な位置づけです。
草になれば野菜、木になれば果物…そんなことよりも「どう使われ、どう売られ、どう食べられているか」が重要視されることになりました。
野菜と果物の違いは、自然の問題というより、人間社会の都合によって決められていることがよく分かります。
まとめ|野菜裁判が教えてくれること
目の前にある植物が野菜か果物か。そんな疑問を持つことがあると思います。
実はその疑問の結論は、植物の持つ構造や性質ではなく「人間社会の都合」であることが少なくありません。
野菜や果物といった分類は、絶対的に決まっているものではなく、時代や制度、文化によって変わる「相対的」なものだったりします。
これらトマトやスイカ、キュウリの事例は、私たちが当たり前だと思っている食の常識が、実はとても人間的な判断の上に成り立っていることの良い例だと思います。
もしかしたら数年後、何かをきっかけに「昨日まで野菜だった植物が、今日から果物です」…なんてことも起こりえるのかも知れません。
東京戸張株式会社のWEB担当。
兼業農家に生まれ、家庭菜園と米づくりの経験は20年近くとなる。
副業でミミズを育て売るというかなり特殊な父親に育てられた。
土いじりもパソコンいじりも好き。だが、この世界で最も嫌いなものはきゅうり。












