食べても安全?耐病性品種の野菜|うどん粉病に強いきゅうりなど

食べても安全?耐病性品種の野菜|うどん粉病に強いきゅうりなど

食べても安全?耐病性品種の野菜|うどん粉病に強いきゅうりなど

夏に向け気温があがってくるこの時期、筆者の家庭ではキュウリの消費量が激増しています。
間もなく2歳となる息子までもが、朝晩を問わずきゅうりをむさぼる毎日。キュウリの魔力恐るべし…
などという我が家のきゅうり事情はともかく、先日種苗店を歩いていた際「うどん粉病・べと病に強い」というキャッチコピーのきゅうりの種が目に留まりました。
子どもを育てる親の身としては「これってどんな原理なのか?」「食べても人体に害はないのか?」がやはり気になってしまいます。
今回は耐病性品種や抵抗種と呼ばれる「品種改良によりうどん粉病やべと病への耐性が高められた」野菜(特にきゅうり)について紹介していきたいと思います。

病害に対して耐性…それって食べても安全なの??

耐病性品種って何?

人間だけでなく、植物もその成長の過程で多くの病害と対峙しています。
耐病性品種は、例えば人間であればインフルエンザの予防接種を行うことがありますが、予防接種により得られる耐性を「先天的に持っている」品種だと考えるとイメージしやすいかも知れません。

■耐病性品種とは?

耐病性品種とは、特定の病害に高い抵抗性を持つ品種のことを指します。簡単に言えば「病気にかかりにくい」品種の野菜です。「絶対に病害にかからない」ということは極めて難しいのですが、仮に感染しても症状が発生しなかったり、被害を大きく抑制できたりするため、家庭菜園や初心者でも扱いやすい品種と言えます。

耐病性品種は種苗店でも広く取扱われている

■病気に強いことでのメリット

病害に強いという事は、ただ病気になりづらい、育生に失敗しにくいというだけでなく、様々なメリットが考えられます。収穫量や作物そのものの品質はもちろんのこと、育生に必要なコスト面も大きな影響をが考えられます。

【病気に強いことでのメリット】
・病害リスクを避けることで収穫量が安定する。
・農薬の使用量を減らすことで、農薬代の削減ができる。
・農薬の散布回数が減ることで、環境負荷を軽減できる。
・防除作業が減るため、野菜栽培にかける時間的コストを削減できる。

野菜栽培の大敵「うどん粉病」「べと病」

「うどん粉病」や「べと病」は主にキュウリなどのつる野菜の栽培において、梅雨時期以降に発生しやすいとても厄介な病気です。いずれも作物の育生を阻害するだけでなく、最悪の場合は作物そのものを枯死させるほどの危険性を持ちます。
胞子を用い繁殖する菌類が原因であることで知られ、特にうどん粉病はきゅうり栽培の難敵として非常に有名な病害です。

■うどん粉病菌類?

うどん粉病は、植物の葉や茎に白い「うどん粉をまぶしたような斑点が現れる」病害です。この白い斑点の正体は植物に寄生する糸状菌(カビ)であり、このカビは植物に寄生することで栄養を吸収し繁殖して行きます。寄生された葉や茎は次第に変色していき植物の育生を大きく妨害し、ひどい場合には最終的には枯死してしまいます。

うどん粉のような白い粉が!正体はカビ!

■べと病とは?

べと病もやはり糸状菌(カビ)がもたらす病害です。白い粉のようなものが葉に生じるうどん粉病に対し、べと病では葉脈に囲まれた薄黄色の斑紋が複数発生します。発症した葉がベトベトになり枯れて行くことや、じっとりベトベトした多湿の環境下で多く見られることから「べと病」と名付けられたとされています。

黄色い斑紋が葉全体に広がる。これもカビ!

どのようにして病害を防ぐの?

耐病性品種がどのようにして病害を防ぐかは、その品種や作物の種類によっても異なりますが、代表的なものを紹介したいと思います。

■R遺伝子による防御反応

耐病性品種、特にうどん粉病への耐性を持つきゅうりには、病原菌を感知し防御する「R遺伝子」を多く所持します。R遺伝子のRは「Resistance(抵抗性)」を意味します。R遺伝子は病原菌を感知した際に、驚くことに、感染部位の細胞を即座に自爆させることで感染を防ぎます。
うどん粉病などの原因となるカビは植物へ寄生することで生息しますが、寄生先の細胞をなくしてしまうというわけです。

強化された遺伝子が病害を防ぐ!

■抗菌物質の生成

特定の病気に感染した際に、病原菌の繁殖を抑制する抗菌タンパク質類を素早く、かつ大量に生成することにより、病害の発生や進行を大きく妨げる品種も存在します。R遺伝子の寄生先を潰してしまう戦略に対し、こちらは免疫力での真っ向勝負といったイメージです。

■表皮構造を変形させている

一部の品種においてですが、葉の表面を「物理的に菌が入りにくい構造」へと変形させているものも存在します。感覚としてですが、城壁を高く、堀を深く整備し、城門で敵を食い止める「籠城戦」をイメージすると分かりやすいかも知れません。

耐病性品種は食べても害はないの?

病害を防ぐいくつかのメカニズムが分かったところで、やはり一番気になるのは「人体に有害ではないのか?」という点だと思います。結論を言ってしまうとその心配はない、人体にとって害は無いのですが、その根拠について解説をしたいと思います。

■遺伝子組換えではないので一般の野菜と同じ

品種改良というと何となく「遺伝子を操作しているのではないか」「何か薬品を加えているではないか」と考えてしまいますが、これらの耐病性品種は「遺伝子組み換えではなく、植物自体がもともと持っている遺伝子を強化したもの」と言えます。先述したR遺伝子もそのひとつです。強い耐病性は人工的に作らたものではなく、外来の遺伝子や特殊な薬品が組み込まれているわけでもありません。
もともとその野菜自体が所持している遺伝子がそのまま機能しているため、その構成成分は広く口にされている一般的な野菜と何も変わらないのです。

■ほとんどがタンパク質

品種改良種の耐病性を高めているR遺伝子などは、もともと野菜に備わっている遺伝子ですが、これは食べられた後には体内でタンパク質として分解されてしまいます。
品種改良されていないごく普通の野菜にも含まれているというだけでなく、体内での分解後の成分もしっかりと観測されているため、食物として摂取することに不安がありません。

■安全性が厳重に検証されている

成分や原理ももちろん重要ではありますが、一番安全性について保証できる理由は「多くの審査を通過し販売されている」という点です。
市場に出回る耐病性品種は、農研気候や民間会社における安全性や栽培適性の確認・審査を通過する必要があります。それだけでなく品種登録の際には「国の審査」も行われています。
それほどまでに日本の食品は、しっかりとした管理が行われています。これが人体に対し安全と言える一番の理由です。

審査を合格した品種が販売されている。

完全な「免疫」でないことに注意!

耐病性品種を育てる際の注意点ですが、耐病性品種であっても病害に絶対にかからない、というわけではないことをあらかじめ理解しておく必要があります。

■耐病性品種でも病害にかかることはある!

これらの耐病性品種について注意しなければいけないことは、あくまで「病気にかかりにくい」のであって「絶対にかからないわけではない」点です。特に風通しの悪い「多湿の環境」では病害が発生しやすく、いかに耐病性の高い品種であっても、うどん粉病などの病害が発生してしまうケースがあります。病害を避けるためには、これらの品種の高い耐病性に頼るだけでなく、しっかりとした環境づくりを行う必要があります。

大切なのは病害に強い環境づくり

もちろん耐病性品種を育てることで病害のリスクを大きく減らすことはできます。しかし完全というわけにはいきません。それでは野菜栽培においてどのようなことに気を付ければ良いのでしょう?

■病害菌は湿気を好み繁殖する!

野菜栽培において病害を防ぐための一番の課題は「通気性」、つまり風通しです。
風通しが非常に重要な理由は、うどん粉病やベト病などといった病害の原因となる「カビ類」が多湿の環境を好むからです。このじめっとした環境で菌類は激しく繁殖し、せっかくの作物をダメにしてしまいます。

カビの繁殖と湿気は密接な関係に!

■通気性の確保にきゅうりネット(園芸用ネット)

きゅうりネットは本サイトの中で何回も登場していますが、安価でありながら野菜栽培の病害対策に関してベストアンサーとも言える農資材だと思います。きゅうりネットは、作物をネットに沿わせ成長させる(誘引する)ことで、葉の密集を防ぎ、必要な通気性を確保するのに非常に便利なネットです。

きゅうりネットが優れている点は病害対策の重要点「通気性の確保」の他にもう一つあります。それは「採光性の向上」です。葉を密集させないことは風通しを良くするとともに、一枚一枚の葉が太陽光に当たりやすくなることを意味しています。
より多く太陽光を取り込むことで作物の光合成を促し、作物の成長を促進させる効果があるというわけです。

きゅうりネットを使用したきゅうりの栽培。通気性ばっちり!

また「きゅうりネットは、きゅうり栽培にしか使えないの?」と思われる方も多いかも知れませんが、きゅうりネットはナスやトマトなどの育生でも使用される園芸用の総称として現在使われています。
多くのつる野菜の栽培に対応しているため「つる野菜にはきゅうりネット」と覚えておくと良いでしょう。

【関連記事】
【ナス・トマト栽培】園芸用ネットは本当に全部きゅうりネットでいいのか?
https://tokyotobari.co.jp/tobari-net/2025/03/21/post-1669/

まとめ

作物の中には、本記事で紹介したような特定の病害に強い耐性を持つ「耐病性品種」が存在します。これらは品種改良の末に生み出され「食品としての安全性がしっかりと認められた上で」広く販売されているものです。
病害に強いことから育生の難易度が下がるというだけでなく、栽培コストの面でも大きなメリットがあり、特に家庭菜園や初心者の方にオススメできる品種です。
ただし耐病性品種だからと言って過信は禁物!育成の際にはしっかりと病害を防ぐ環境をつくることを意識しましょう。
カビをはじめとする病原菌の多くは湿気が大好きです。まずは通気性の確保から!「きゅうりネット」がおススメです!

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