【新しいハダニ対策】ハダニの発生を可視化し、駆除のタイミングを逃さない

【新しいハダニ対策】ハダニの発生を可視化し、駆除のタイミングを逃さない

【新しいハダニ対策】ハダニの発生を可視化し、駆除のタイミングを逃さない

毎年梅雨の時期から10月まではさまざまな害虫が発生しますが、「ハダニ」もこの時期を代表する害虫のひとつです。国内でも約70種類ものハダニが存在し、作物への被害はあとを絶ちません。
多くの対策法が打ち出されているもの、とにかくハダニは小さいため見つけることが難しく、対応が後手になってしまうのも被害の大きな要因となっています。

本記事ではそんなハダニの新しい対処法として開発された「プルトラップ-9」(以下プルトラップ)についてご紹介したいと思います。

イチゴ畑に設置されたプルトラップ-9

ハダニとは?

プルトラップのご紹介に入る前に、ご存知の方も多いかも知れませんが「ハダニ」について、特徴や発生時期、一般的な対処法やその問題点についてまとめたいと思います。

■ハダニの特徴と発生時期

ハダニは植物の葉の裏に発生・生息し、針状の口器を植物に突き刺し水分や養分を吸い取る、吸汁性の害虫です。体長はわずか0.5mほどと非常に小さく、肉眼で確認しづらい生物です。
オスメスが分かれていますが、オスがいなくともメスは産卵ができ一度の産卵で50~100程の卵を産みます。卵は一週間から10日程度で孵化します。
発生時期は3月後半から10月頃で、特に梅雨明けから9月後半のに活動・繁殖が盛んになります。

ナミハダニ(photo By Flickr user ID sanmartin (Creative Commons))

■ハダニによる被害

ハダニは葉裏に生息し吸汁を行うため、初期はハダニに吸われた箇所が白い斑点として出現し、その後葉全体の色が黄色く変色していきます。これはハダニが植物の葉緑素を吸い取っていることが原因です。葉緑素を失った植物は光合成が疎外され、養分(糖)の生成が不十分となり成長が遅れ、収量は減り、最悪枯死してしまう可能性もあります。
またクモの巣のような糸を張る種類のハダニも存在し、特に観賞植物では見映えを大きく損ねる結果となってしまいます。

ハダニに養分や葉緑素を抜かれてしまったバラ

ハダニが発生しやすい作物

ハダニの被害を受けた作物は、葉緑素が抜け生育が大きく鈍ります。花の開花は妨げられ果実がつきにくくなり、結果として収穫量の減少へと繋がります。ハダニが発生しやすい=ハダニ対策が必要な作物としては以下のようなものがあげられます。

【対策が必要な野菜】
トマト、ナス、ピーマン、豆類 など
【対策が必要な果樹】
イチゴ、リンゴ、梨、桃、柿、ミカン など
【対策が必要な花】
バラ、カーネーション、キンモクセイ、ガーベラ など

ハダニ対策の定番、天敵「カブリダニ」

ハダニの天敵は同じダニであるカブリダニ類で、特に「チリカブリダニ」「ミヤコカブリダニ」が知られています。世界中の多くの農場でハダニ対策としてカブリダニが活躍しており、事実としてハダニ対策に非常に有効です。

■ハダニを捕食し、作物を食べない

ハダニの天敵であるカブリダニは、ハダニを捕食するだけでなく「作物を食べない」という点で、非常に農業にとって貴重な益虫です。ハダニがいない場合は、その他の微小昆虫や花粉などを食べ、作物に直接加害することはありません。

■天敵製剤として放飼される

天敵製剤とは、ハダニ駆除であれば天敵であるチリカブリダニなどを含有する製剤のことです。散布する(放飼する)ことで容器内のチリカブリダニを放ち、害虫であるハダニを捕食させます。
カブリダニを含有する天敵製剤の利点は大きく2点あります。ひとつは、上記の通りハダニだけを捕食し植物を食べないため、作物に対して無害であること。もうひとつは農薬耐性の高いハダニにも有効なことです。農薬下の環境を生き抜いたハダニは農薬に対する耐性を獲得し、以降農薬が効きづらくなることが知られています。

カブリダニがハダニを捕食する習性を利用

天敵製剤の欠点

カブリダニを農場に放飼する天敵製剤は、ハダニ対策にとって非常に有効で世界的に使用されていますが、実はいくつかの弱点が存在します。

■欠点1:ハダニが繁殖しすぎている場合、効果が薄い

カブリダニを用いた天敵製剤の一つ目の欠点は、ハダニの繁殖が進んでいる場合に十分な効果が得られないことです。繁殖が進んでいるとはどの程度の状況かというと、千葉県農林水産部の資料には「ハダニ類が葉裏に網を張り巡らすほどに多発生してしまった場合」と書かれています。
とは言え、もちろん葉裏に網が張られるまでは絶対セーフという訳ではないので、まずはハダニの発生量を把握することが大切になります。

【参考】千葉県農林水産部:ハダニ類の IPM 防除マニュアル
https://www.pref.chiba.lg.jp/annou/documents/nihonnashi-ipm.pdf

■欠点2:カブリダニは寿命が短い

二つ目の欠点はカブリダニの寿命の短さです。上記カブリダニが繁殖しすぎると効果が薄くなると言う理由から、基本的には先置きとなる天敵製剤ですが、カブリダニの寿命は成虫になってから2週間未満と短く、必要となったタイミングで製剤内のカブリダニが死滅しているかもしれないと言うジレンマを抱えています。
カブリダニにとってエサとなるハダニの絶対数が少なければ、より生存期間は短くなってしまいます。ハダニの発生さえ防げれば問題ないと考え天敵製剤を継ぎ足し続けることはできますが、コスト面では別の方法を検討したいところです。

■放飼するタイミングが難しい

まとめると、カブリダニの放飼が遅いと効果が薄く、逆に早すぎると寿命の問題がでてきます。適切なタイミングを計るのが難しいというのが、カブリダニを用いた天敵製剤の課題と言えます。この問題を解決するには、単純に「ハダニは発生しているのか?どの程度ハダニがいるのか?」それが分かれば対応がしやすいという事になります。

プルトラップでハダニの発生量を可視化する

大変お待たせ致しました。ここからが「プルトラップ」の紹介となります。
ハダニは発生の見極めが難しく、対応が遅れると天敵製剤の効果が薄れてしまいます。ハダニの発生とその発生量を掴むのがプルトラップの役割となります。

■プルトラップは「ハダニの捕獲装置」

「プルトラップ」は一言で言うと、ハダニを捕獲するためのトラップ(罠)です。
極めて単純な話ですが、罠を設置しハダニを捕まえることで発生のタイミングと発生量を測定します。捕らえ方も「粘着素材で捕まえる」という、原理だけを考えると太古からある蝿取り紙と何一つ変わらない方法での捕獲です。
しかし実は「ハダニを粘着素材で捕まえる」ことは想像以上に難しいことでした。その理由はダニの脚力にあります。ハダニには8本の脚がありますが、粘着し離さない力を脚力が上回り、なんと粘着素材の上を歩くことができてしまっていたのです。
この問題を、ハダニの習性を利用し解決したのが「プルトラップ」という製品なのです。

設置してくっつけて捕まえる、ただそれだけに見えるが・・・
無数のつぶつぶ全部がプルトラップにより捕獲されたハダニの死骸

■天敵カブリダニを捕えない

プルトラップの重要な長所として、ハダニの天敵カブリダニを捕まえず、ハダニのみを捕まえることができます。そのため、益虫であるカブリダニごと捕まえてしまうという心配がありません。

先述した通りダニは、粘着性のテープの上を歩いて逃れることができます。ダニが粘着素材に捕まるケースはその胴体が粘着素材に捕まった時のみとなり、ダニ達にとっては粘着テープにお腹がくっつかなければ勝ちなのです。この地面からお腹までの距離を比較すると、ハダニはカブリダニと比べ地面に近い体型をしています。車に例えるならハダニは「シャコタン」だと言えるかもしれません。この点に注目し、ハダニのみを捕えるよう緻密な計算がプルトラップにはなされています。

■試験では80匹のハダニを絶滅させた

ブラジル、サンパウロ市でプルトラップとカブリダニを使った次のような試験が行われました。
【試験内容】
試験エリアに、ハダニ80匹、天敵となるカブリダニ10匹をそれぞれ放飼、そこにプルトラップを設置し個体数の増加・現象を確認する。

この試験を開始した6日後、80匹のハダニは絶滅、うち45匹はプルトラップがハダニを捕獲していたのです。厳密には1匹のみプルトラップはカブリダニも捕まえていましたが、ハダニの発生を可視化するだけでなく、ハダニの個体数を減らすことに対してもプルトラップの有用性が示された実験であると言えると思います。

本記事を読んで新しいハダニ対策「プルトラップ」に興味を持たれた方は、是非下記連絡先一覧より最寄りの営業所までお問い合わせいただければと思います。

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