■最終更新日:2025.12.26
いんげん豆とえんどう豆の違いは?つるの違いから最適な支柱・ネットを解説
「いんげん豆」と「えんどう豆」は、どちらも「つる性植物」に分類され、つる(茎)が絡みつきながら育っていくイメージがあると思います。
そのため、家庭菜園でもこれらを育てる際には、支柱を立てネットを垂直方向に張り、それにつるを絡ませる方法が一般的です。しかし実際には、「いんどう豆」と「えんどう豆」のそれぞれが対象に巻き付く構造は大きく異なります。
本記事では、「えんどう豆」と「いんげん豆」、それぞれがどのように支柱やネットに巻き付くのかに焦点を当てながら、栽培にはどのようなネットが最適かを解説していきます。

いんげん豆とえんどう豆の植物学的違い
植物学的に見ると、いんげん豆とえんどう豆は同じマメ科ですが、属が異なります。
この属の違いは、主に栽培する際の生育温度に影響し、いんげん豆は温暖な気候を好み、えんどう豆は比較的冷涼な気候でも育ちやすい特徴があります。
| 項目 | いんげん豆 | えんどう豆(エンドウ) |
|---|---|---|
| 属・科 | インゲンマメ属/マメ科 | エンドウ属/マメ科 |
| 原産地 | 中南米 | 中央アジア〜中近東 |
| 種の分類 | 暖地性の夏野菜 | 冷涼期の冬〜春どり野菜 |
| 生育温度 | 高温を好む(発芽・生育とも温暖) | 低温に比較的強い/耐寒性あり |
| 根の性質 | 比較的浅根性 | やや深根性で倒伏しにくい |
| 主な食べ方 | さやごと食べる | 若さや、または、さやの中の種子を食べる |
上記なような違いの他に、いんげん豆とえんどう豆で大きく異なる性質として、つるの性質と登攀(とうはん)方法が挙げられます。
登攀(とうはん)とは、簡単には「よじ登る」と言う意味で、どのように支柱やネットに沿い成長していくか、です。
| 項目 | いんげん豆 | えんどう豆(エンドウ) |
|---|---|---|
| つるの性質 | 茎そのものが「つる化」して巻き付く | 「巻きひげ」で支持物をつかむ |
| 登攀方法 | 茎が螺旋状に支柱へ巻き付く | 細い巻きひげが細かい網やヒモをつかむ |
この、つるの性質、登攀方法の違いが、支柱やネット選びに関わる内容と言えます。
いんげん豆|茎(つる)が巻き付く
いんげん豆は「つるあり」と「つるなし」の品種に分かれますが、本記事で紹介するのは、支柱やネットを使って栽培する「つるあり」のタイプのものです。
■いんげん豆は「茎自体」が巻き付く
いんげん豆は、茎(つる)が触れたものに、螺旋状に巻き付くように成長していきます。茎そのものが伸びながら支柱やネットに自ら巻き付いて登っていくのが特徴です。
つるは先端が周囲を探るように動き、触れたものに沿って螺旋状に巻き付くため、ある程度の太さや間隔のある支柱・ネットでも保持できます

えんどう豆|「つる」ではなく「巻きひげ」
えんどう豆が、支柱やネットに巻き付かせているものは、つる(茎)ではありません。「巻きひげ」と呼ばれる葉が変形してできた器官により、ネットなどに絡みついています。
■えんどう豆は「巻きひげ」が巻き付く
えんどう豆は、いんげん豆同様に「つる性植物」と呼ばれています。しかし、実際にはえんどう豆は「つる」ではなく、「巻きひげ」という器官によりネットなどに絡みついています。
えんどう豆の茎は節ごとに垂直に伸び、つるのように巻き付くことはありません。そのため「巻きひげ」という葉が変形した器官がネットなどに絡みつき、茎や実の重量を支えています。
えんどう豆だけでなく、きゅうり等も同じく、巻きひげにより絡みつきながら成長する野菜です。果物でいえば、ブドウも巻きひげを使い成長する果物です。
えんどう豆やキュウリは葉を変形させ、ブドウは茎を変形させ、巻きひげを作っています。

■巻きひげとは?
巻きひげとは何か?ですが、わかりやすく例えると、植物の手(腕)のようなものだと言えます。
えんどう豆は「巻きひげ」という手を伸ばし、その手で支柱などを掴むことで自身を支えています。言うなれば「ぶら下がっている」状態です。
対して、いんげん豆のようにつるそのものが支柱に巻き付くタイプのものは、人間で言えば、手足で支柱をしっかりと「抱きしめている」状態だと言えます。

それぞれどんなネットが適している?
ここまで解説したように、いんげん豆とえんどう豆では、性質や成長の仕方が異なることから、栽培で使用する園芸ネットも、違う規格が求められます。
■いんげん豆の栽培に適したネット
いんげん豆は、茎がつる化し巻き付くため、太い支柱などにも絡みつくことができます。また太い茎自体が巻き付くため、自然といんげん豆全体を支える強度も強くなります。
このような性質から、使用するネットは採光性、通気性を十分に確保できる大きな網目のものが良く、20cmを越える目合いのものが推奨されます。

【いんげんネットの規格】

■えんどう豆の栽培に適したネット
えんどう豆は、葉が変形した細い「巻きひげ」を使い、ネットに巻き付きます。
もっとも太く頑丈な茎自体が巻き付いているわけではないため、倒伏を避けるためには、なるべく多くの巻きひげがネットに絡みつく必要があります。
そのため、いんげん豆と比較し網目の細かいネットを使いますが、細かければ良いというものではなく、やはり風通しとのバランスが必要になってきます。
えんどう豆自体の強度や風通しを考慮した場合、目合い15cmほど自体のだとされています。

【えんどうネットの規格】

まとめ|困ったら「きゅうりネット」!
いんげん豆とえんどう豆のそれぞれの性質や対応する園芸ネットについて紹介してきました。
各作物に適した網の太さや目のサイズを選ぶことで、これまで以上に「あと一歩踏み込んだ作物の育生」が可能となります。
いんげん豆、えんどう豆に合わせ規格が作られた、「いんげんネット」や「えんどうネット」は、これらの栽培においてそれぞれの作物に最適を求めた製品だと言えます。
しかし、「いんげんネット」や「えんどうネット」は意外とマイナーで、市場に出回る数も少なく、手に入りにくい現実があります。
もし、手に入らない場合や別のもので代用したい、他の作物にも使える園芸ネットを選びたいという場合は「きゅうりネット」を使うことがオススメです。
以前の記事でも触れましたが「きゅうりネット」は、つる性植物栽培において最も需要が大きいという背景から、あらゆるつる性植物へと対応できるよう進化してきた歴史がある「万能型ネット」だと言えます。
実はナスやトマト栽培にも使える「きゅうりネットの万能性について」ご興味を持たれた方は、是非以下の記事も合わせてお読みいただけますと幸いです。
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農業資材のプロとして、防鳥網や防風ネットなどの製品販売、施工、
その後のサポートまでワンストップで手掛けています。
現場でのさまざまな経験を基に、皆様の役に立つ情報を発信していきます。














