万博騒然!大量発生するユスリカの人体や農作物への被害、影響は?

万博騒然!大量発生するユスリカの人体や農作物への被害、影響は?

万博騒然!大量発生するユスリカの人体や農作物への被害、影響は?

大阪・関西万博で大量発生し大きな問題となっている「ユスリカ」ですが、ユスリカは日本中に幅広く分布する昆虫で、特に温暖な地域ではほぼ一年を通してみられることもあります。
ユスリカは非常に普遍的な飛翔昆虫であるというだけなく、繁殖期には群れを形成し集団で飛行することもあり「煩わしい」という印象が非常に強い虫です。この集団飛行は、その異様さから「蚊柱」とまで呼ばれるユスリカですが、人体や農作物への被害・影響はないのでしょうか?
本記事では世間を騒がしている昆虫「ユスリカ」について、その特性をご紹介して行きたいと思います。

集団で飛行する小さい虫。一度は見たことがあるのでは?

ユスリカとは

まず最初にユスリカの生態や生息域、発生時期、食性について紹介したいと思います。

■ユスリカとは?

ユスリカ(揺蚊)は、ハエ目ユスリカ科に属する昆虫の総称です。
非常に種類が多く、世界に約15,000種、日本に限定しても約2,000種が存在しています。最も気になるポイントだと思いますが、ユスリカは「蚊」ではありません。
成虫の体長はおよそ0.5~10mm程度。紫外線に引き寄せられる習性をもっており、照明などの光に集まるため、該当や自動販売機の灯りに群がる姿がよく見られます。

日本だけで2000種存在。画像はオオユスリカ。

■ユスリカの生息域

ユスリカは世界中に広く分布する昆虫で、日本でも北海道から沖縄までその姿が確認されています。
ユスリカの幼虫はほとんどが水生で、河川や用水路、側溝、湖沼などの淡水域に生息しています。きれいな水から汚い水まで幅広く生息し、中でもユスリカの一種であるセスジユスリカの生息は、環境省の水質調査において「大変きたない水」の指標となっています。

■ユスリカ(成虫)の発生時期

ユスリカは一年を通して発生しますが、発生のピークは初夏から秋の終わりにかけてです。暖冬化が進み、主となる発生時期が12月以降まで近年伸びてきています。温暖な地域ほど発生時期は長くなりますが、逆に暑すぎると動きは鈍くなり、35℃以上では活動がなくなり、そのまま死滅することも少なくありません。

■ユスリカの食性

ユスリカの成虫は一切の食事をしません。
見た目が「蚊」に似ており漢字でも「蚊」の文字を使うため勘違いされることも多いですが、ユスリカは蚊ではなく、血を吸うこともありません。
成虫には一切の口器がないため餌をとることができず、消化器も退化し機能しなくなっています。そのため、成虫の寿命は1日程度、長くても5日とされています。

一方で、ユスリカの幼虫は、主に藻類や「デトリタス」と呼ばれる微生物の死骸や排泄物、またそれを起源とする有機物質を食べ成長します。ユスリカの種類によっては他の水生昆虫に寄生するものもあります。

【参考】ユスリカ-Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/ユスリカ

ユスリカの人体への影響

■ユスリカは血を吸わない

ユスリカは、蚊ではなく口器を持たないため、血を吸うこともありません。これは他の動物に対しても同様です。カマキリやハチのような外敵を攻撃する形状や器官も持たないため、ユスリカにおける外傷のリスクは全くないと考えられています。

■吸い込むと危険?ユスリカ喘息

ユスリカは非常に小さい昆虫であり、群れをなし、人間の顔の高さで飛行していることも多いため、鼻や口から体内にはいってしまうケースが見られます。長らくユスリカを吸い込んでも健康被害はないとされてきましたが、海外でユスリカの吸引に伴う喘息「ユスリカ喘息」が確認されて以来、国内でも非常に数が少ないながら、同「ユスリカ喘息」の発症例が報告されています。ユスリカとの接触は、できる限り避けるに越したことはありません。

国内では、河川敷をジョギング中に吸い込んでしまい発症

■死骸がアレルギーを引き起こすことも

人体への影響が一番大きいと考えられるのは、ユスリカの死骸や脱皮殻から生じるアレルゲン物質により引き起こされるアレルギー反応です。
軽い鼻炎から、重度のものだと喘息に至るまで、ユスリカが原因となるアレルギー疾患は多く確認されています。特に発生量の多い水辺、河川沿いなどでは注意が必要です。

ユスリカの農作物への影響

■ユスリカは農作物を食べない

前述の通りではありますが、とにかくユスリカには口器がありません。成虫となってから死ぬまで一切の食事をとらないため、農作物やその他の食品を直接荒らすということはありません。

■ユスリカを食べる生物による二次被害

ユスリカ自体は農作物を食べませんが、ユスリカを食べる生物を引き寄せることによる二次被害は大いに考えられます。ユスリカを食べる生物は、ハチやトンボ、クモ、ヘビなど多岐にわたりますが、名でも鳥類は非常に種類が多いです。
ヒヨドリ、ツバメ、モズ、セキレイ、メジロなどがユスリカを食べる代表的な鳥ですが、中でも「ヒヨドリ」は日本全土でも個体数が多く、農作物被害額は、カラス、カモに次ぐ第3位と非常に危険と言える鳥です。

ユスリカは体長が0.5~10mmと非常に小さな虫です。圃場への侵入を防ぐのであれば、ユスリカを狙う鳥に対し防鳥ネットなどで対策を行うのが良いでしょう。

【関連記事】防鳥網によるヒヨドリ対策
https://tokyotobari.co.jp/tobari-net/2025/03/24/post-1730/

かわいい顔して農作物被害額第3位

ユスリカの問題点

ユスリカを狙う動物を呼び寄せることはあるものの、直接人を襲わない、作物を荒らさないユスリカには他にどのような問題点があるのでしょうか?

■不快害虫である

ユスリカ最大の問題は「不快害虫」であることです。不快害虫とは、直接的な害はなくとも心理的に不快感や嫌悪感を与える虫のことを指します。なんとなく「代表的なのはあの虫か」が思い当たるのではないでしょうか?
不快の理由として一番大きいのはやはり「不潔感」です。よく分からない虫が大量に発生しているというのは、やはり気持ち良いものではありません。不快ですめばまだ良いのですが、多すぎる数量は恐怖すら生んでしまいます。これこそが大阪・関西万博万博で話題となっている大きな理由でもあります。

「もしお店の入口に小さい虫が群れを成し飛んでいたら、そのお店にはいりますか?」と考えていただくと、ユスリカが不快害虫であるという問題点がより伝わるかもしれません。

■蚊柱を作る(繁殖行動)

「蚊柱」というものを見たことがあるでしょうか?規模の小さいものであれば、暖かい時期には全国いたる所で無数に発生していると思います。
「蚊柱」はユスリカが繁殖を行うときに見られる現象で、数十から数百匹のオスが群れをつくり、まるで集団をかき混ぜるように飛行します。ユスリカのメスはその中に飛び込み、交尾を行う相手を探します。蚊柱を見かけると不快な気持ちになることがあると思いますが、日本の蚊柱はまだ小さく、海外では10メートルにものぼる蚊柱が発生したケースも幾度と報告されています。
「柱」と呼ばれていますが、決して某作品における対鬼部隊の精鋭の通称であったり、蟲の呼吸の型などではありません。

ユスリカが集まり「柱」に。これでも小規模。

ユスリカの対策は?

上記のようにユスリカは直接的な害をもたらすことはなくとも、衛生面や心理面に強く影響を与える不快害虫です。ユスリカへの対策はどのようなものが考えられるでしょうか?

■基本対策は殺虫剤

大阪・関西万博での対応を見ると明白ではありますが、ユスリカが大量発生した際の基本的な対策は「殺虫剤」の散布となります。もちろん「忌避剤」などでも構いません。
大阪・関西万博では、ユスリカ駆除の相談を受けたアース製薬が、市販もされている『虫こないアース』などの殺虫剤3,000本を提供したことなどが大々的に報じられています。

また、ユスリカの成虫は寿命が1日から数日程度と極めて短いため、成長制御剤などの薬品を用い幼虫を羽化させないことでも目に見えて個体数を減らすことができます。

【参考】アース製薬:虫こないアース
https://www.earth.jp/brands/mushikonai/index.html

■ユスリカを発生させない環境づくり

ユスリカは基本的に水場に産卵を行います。主に河川や用水路、湖沼などがあげられますが、水場の定義が非常に広く、例えば古いタイヤの間にたまった水であっても、ユスリカが産卵し成虫になるには十分な水場とされています。
まずはこのような不要な水場をつくらないことが非常に重要です。庭においてある普段使っていないバケツや桶も雨水が溜まれば水場のひとつとなります。庭や畑などの整理整頓をすることが、ユスリカの発生を妨げる予防策として機能するでしょう。

防災用と考えていても、ユスリカには産卵場所

■紫外線をださない

ユスリカは紫外線に引き寄せられる習性を持ちます。例えば蛍光灯から発される紫外線は太陽光に比べ極めて微量ですが、それでもユスリカなどの虫は検知し近寄って行きます。
紫外線をカットするフィルターを貼るなどの方法もありますが、継続的なコストを考えても光源をLEDに変えるのが最もシンプルで良いと思います。LEDであれば紫外線を放出しません。

まとめ

ユスリカは日本全土、果ては世界中に広く分布する飛翔昆虫です。
川沿いや用水路沿いなど、水辺に発生していることが非常に多く、目にする機会はかなり多いと思います。そのため多くの方は「うじゃうじゃ飛んでるあの虫か!」となったのではないでしょうか?
ユスリカ(揺蚊)という名前ですが、蚊ではないため血を吸うことはありません。しかし、灯りに惹かれ屋内へ侵入したり、何より集団で飛び回る様は蚊柱と呼ばれ「不快害虫」として認識されています。

近年では、平均的な気温上昇や天敵である鳥類が減ったことなどに起因し大量発生するケースも増え、特に大阪万博では大きな話題となっています。
全国に幅広く分布するだけに、対策は個人の力では限界があるのかもしれませんが、庭や畑といった自身の周りから、ユスリカの発生を防ぐ取り組みを始めてみましょう。

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