■最終更新日:2025.12.11
牛が主役の珍研究!イグノーベル賞の世界がモ~止まらない!
裏のノーベルとも呼ばれる「イグノーベル賞」をご存知でしょうか?
イグノーベル賞は、ノーベル賞のパロディとして1991年に創設された「人々を笑わせ、そして考えさせる」研究や発明対しに贈られる賞です。
人々を笑わせるという命題から、非常にユニークな研究が多くみられるイグノーベル賞ですが、実は「牛」に関する研究が数度登場します。(対し「馬」や「豚」は一度も登場していません…)
本記事では、そんなイグノーベルを受賞した「牛」に関する研究についてご紹介したいと思います。

イグノーベル賞とは?
ノーベル賞は知っていてもイグノーベル賞は知らないという方も多いかも知れません。イグノーベル賞について簡単に解説したいと思います。
■イグノーベル賞とは
イグノーベル賞とは、「人々を笑わせ、そして考えさせる」研究や業績に与えられる賞です。
1991年にアメリカの科学ユーモア雑誌『Annals of Improbable Research(ありそうもない研究年報)』の編集者マーク・エイブラハムズによって創設されました。
名前はノーベル賞をもじったもので、「ignoble(くだらない、恥ずかしい)」という英単語を掛けています。受賞対象は一見ばかばかしく思えるけれど、科学的に真面目に行われた研究です。例えば「パンを落とすとバターを塗った面が下になり落ちる」や「たまねぎを切ると涙が出る理由」など、笑えるけれど興味深いテーマが選ばれます。
授賞式はハーバード大学で行われ、実際のノーベル賞受賞者がプレゼンターを務めることもあります。ユーモアを通じて科学への関心を高めることを目的とした、ユニークな賞です。

■イグノーベル賞はいつ発表される?
イグノーベル賞の授賞式は、例年9月中旬~下旬に行われます。
本家のノーベル賞が毎年10月ごろに発表されるため、その約1か月前に開かれるのが恒例でとなっています。
イグノーベル賞は「本家の前に“笑い”で科学を祝う」という位置づけとなっています。
■イグノーベル賞の賞金
イグノーベル賞の賞金は、なんと「10兆ジンバブエ・ドル」です。
ジンバブエ・ドルって日本円でいくら?と思われた方がほとんどだと思いますが、このジンバブエ・ドルは現在使われていないため「0円」が答えです。
ジンバブエでは、2000年代後半にハイパーインフレが発生し物価が急上昇しました。その結果「100兆ジンバブエ・ドル札」といった極端に大きな額面の紙幣が登場しましたが、実際の価値はほとんどゼロに等しいものでした。
ジンバブエの国自体は今でもアフリカ南部に存在していますが、現在ではジンバブエ・ドル自体は廃止されUSドルなどが使われています。コレクター用として取引することもできますが、現在では高くても1000円程度と、ジンバブエ通貨の賞金は「お金の価値」よりも「ユーモアの価値」を伝えるユニークな演出だと言えます。
ちなみに本家ノーベル賞の賞金は、2025年時点で1100万スウェーデン・クローナ(約1億7800万円)です。
■イグノーベル賞受賞スピーチ
イグノーベル賞を語るうえでもう一つ欠かせないものがあります。それが受賞者のスピーチです。
このスピーチ、実は「笑いを取らなければならない」という暗黙かつ高すぎるハードルが存在します。スピーチの時間は1分間と定められており、これを超えると「ミス・スウィーティ・プー」と呼ばれる8歳の女の子が高い声で「Please stop. I’m bored!(やめて、退屈!)」と乱入してきます。
一見邪魔をしているようですが、これもイグノーベル賞授賞式の定番お笑いポイントとなっています。
それではここからはイグノーベル賞を受賞した「牛に関する」研究内容を紹介していきたいと思います。
2025年「縞模様に塗った牛は虫が寄り付きにくい」
2025年のイグノーベル・生物学賞を受賞した研究は「牛に縞模様を塗ると虫が寄り付きにくい」というものです。
この研究は日本の農業・食品産業技術総合研究機構により2019年に論文として発表されたものです。
縞模様を付けた黒毛和牛に白い塗料で縞模様を塗ったところ、アブやサシバエなどの着地数が約半分に減少し、頭振りや足踏み、尻尾振りのような虫を追い払う行動も少なかったそうです。
牛をシマウマに見立て色を塗るという一見ギャグのような方法ですが、これは「シマウマ効果」と呼ばれ、この原理は完全には解明されていないものの、縞模様が虫の視覚を混乱させ、着地を妨げると考えられています。
これを実際に牛の身体に書いて検証するというユニークな発想が受賞の決め手となりました。
殺虫剤を使わずに家畜のストレスを軽減できるため動物福祉的・環境的な利点も期待されています。
ちなみにこの受賞で、日本人のイグノーベル賞受賞は19年連続となります。

2009年「牛に名前をつけると牛乳を多くだす」
名前をつけられた牛の方が多くの牛乳を搾ることができるというこの研究は、イギリスのニューカッスル大学のによるものです。
研究チームは500軒以上の酪農家を対象に調査を行い、牛に名前をつけて個別に接している農家ではそうでない場合を比較しました。その結果、名前を付けられた牛の方が1頭あたり年間約250リットル多くの乳を出すことが確認されました。
名前を付けることそのものが影響しているのか、名前を付けられた牛の方が熱心に世話をされる傾向にあるからなのか理由はわかりませんが、親しみを持って接することで牛がストレスを感じにくくなり、結果的に乳の分泌を促すホルモンの働きが良くなると考えられています。
この研究は、人と動物の関係性が生産性に影響することを科学的に示したユーモラスで意義深い成果として評価されました。

2007年「牛の糞からバニリンを抽出」
「牛からバニリンが抽出された」研究は、2007年のイグノーベル化学賞を受賞したものです。
日本の国立国際医療センター研究所のチームが、牛の排せつ物(糞)から得られるリグニンという成分を化学的に分解し、バニラの香り成分「バニリン」を作り出すことに成功しました。
バニリンはアイスクリームやお菓子などで広く使われる香料で、特にアイスのフレーバーとして人気の「バニラ」の原料です。
従来は石油や植物から作られますが、この研究では廃棄物を有効利用するという環境的意義が注目されました。もちろん実際に「牛の糞から取ったバニラ味」を食べるわけではありませんが、再利用技術としての可能性を示した点が評価されています。ユーモラスながらも、資源循環や持続可能な化学の未来を考えさせる、まさにイグノーベル賞らしい研究です。

まとめ
イグノーベル賞は、「人々を笑わせ、そして考えさせる」ことを目的にした、世界で最もユニークな科学賞です。一見すると奇妙でばかばかしく思える研究も、そこには科学への深い好奇心と独創的な発想が込められています。
牛の研究をはじめ、日常の小さな疑問や偶然の発見から生まれた成果が、ユーモアを交えながら真面目に評価されるのがこの賞の魅力です。
笑いながら科学の面白さを感じ、常識を少し疑ってみる——そんな姿勢こそが新しい発見の原点なのかもしれません。イグノーベル賞は、私たちに「科学は堅苦しいものではなく、身近で楽しいものだ」と教えてくれる、知的で温かいお祭りなのです。
過去の日本人の受賞では、「カラオケ」や犬語を翻訳できる「バウリンガル」などの発明や、「バナナの皮がなぜ滑りやすいのか」の研究など、ユーモアあふれるものが数多く登場しています。
イグノーベル賞を知らなかったという方が少しでも本記事で興味を持っていただけたら幸いです。

Wikipedia:「イグノーベル受賞者の一覧」
https://ja.wikipedia.org/wiki/
東京戸張株式会社のWEB担当。
兼業農家に生まれ、家庭菜園と米づくりの経験は20年近くとなる。
副業でミミズを育て売るというかなり特殊な父親に育てられた。
土いじりもパソコンいじりも好き。だが、この世界で最も嫌いなものはきゅうり。












