【世界的抹茶ブーム】世界を席巻する日本の味:健康、美味しさ、美しさ

【世界的抹茶ブーム】世界を席巻する日本の味:健康、美味しさ、美しさ

【世界的抹茶ブーム】世界を席巻する日本の味:健康、美味しさ、美しさ

皆さんは普段「抹茶」を飲むことがあるでしょうか?
緑茶であれば口にする機会も少なくないと思いますが、抹茶となるとその回数はグンと下がるのではないでしょうか?かくいう筆者もハーゲンダッツのフレーバーとして食べたのが最後の記憶です。
実は今、日本の抹茶が世界的なブームを引き起こしています。
抹茶の深く鮮やかな緑色は視覚的にも美しく、インスタグラムなどでSNS映えしやすいため、SNS文化との親和性から海外の多くのインフルエンサーに紹介されています。
加えて有名シェフによるスイーツとのコラボレーションや、さらには映画やドラマなどでも抹茶が登場することも多くなりました。
本記事では、抹茶の海外人気とその魅力についてご紹介していきます。

抹茶ブームが世界へ拡がっています!

抹茶はこうして作られる!

世界的に人気の集まる抹茶ですが、どのように作られているかご存知でしょうか?
抹茶は、緑茶と同じ「チャノキ」から作られます。チャノキと言われ木と聞き馴染みがないかも知れませんが、一般的なお茶畑のお茶だと思っていただいて間違いありません。チャノキとカタカナで書くのが標準和名ですが、要は「茶の木」のことです。
木自体は普通の緑茶と同じですが、緑茶と大きく異なる点は茶葉を被覆し日陰にして育てると言う点です。収穫後、乾燥させ粉末状にされたものが抹茶になります。
日光を遮り作られたお茶は、苦みが少なく香りが豊かで、光合成で失われるアミノ酸を多く有することができます。旨味や苦味が引き立ち渋みの弱い抹茶はこうして作られます。

同じお茶の木だが太陽光を遮りながら作ります。

世界的ブームと輸出額の増大

抹茶の世界的ブームが来ている。そう言える理由はSNSなどでの拡散数についても言えますが、輸出額の急成長から明らかと言えます。

■加速する抹茶輸出額の増大

抹茶・粉末緑茶の輸出額は2019年時点から3倍程度に拡大しており、2024年には約364億円に達したことが報道されています。また2025年は7月の段階で約322億円と、前年の同時期を大きく上回るペースとなっています。この輸出量の34%を占めるのはアメリカで、抹茶の一大輸入国となり、抹茶市場の成長の大きな要因となっています。
また抹茶の国際市場の規模は、2020年以降毎年7%程度増加しており、2028年には100億ドルを突破することが見込まれています。

■国内では反対に需要が減っている

国内を見ると抹茶の需要は減少傾向にあります。その理由としてカフェ文化の台頭が挙げられます。コーヒーや紅茶、さらにはタピオカドリンクなど、他の飲み物が台頭してきているため、抹茶の需要は一部のファンに限定される傾向もあります。
また抹茶を使用した和菓子よりも、特に若年層では洋菓子が好まれるようになってきたことも国内需要の減少につながっています。

世界で異なる抹茶の価値観

なぜこれほどまでに世界的な人気を博しているのか?その理由としてSNSによる拡散効果が挙げられますが、実は世界各地で抹茶に対する価値観は異なっています。

■アメリカ・カナダ「健康・クール」

北アメリカに位置するアメリカ・カナダでは、抹茶は「スーパーフード」として健康志向の高い層を中心に人気を集めています。
特に西海岸やニューヨークなどの都市部では、グルテンフリーや抗酸化作用やといった健康に関する要素が注目され、世界有数のコーヒーチェーン「スターバックス」やその他のオーガニック系カフェで抹茶ラテが定番化しています。
セレブやインフルエンサーの発信もブームを後押しし、抹茶スムージーやプロテイン入り抹茶など、さまざまなアレンジが生まれています。近年では、美容・メンタルケア分野でも注目を集めています。

健康面での有用性も人気を後押し。

■ヨーロッパ「高級・アート性」

ヨーロッパでは、抹茶は「洗練された日本文化」として受け入れられ、高級志向のライフスタイル層を中心に人気が高まっています。
特にフランスやイギリスでは、もともと紅茶文化であったことによる親和性の高さも手伝い、抹茶の深く美しい緑色は高級スイーツ文化と融合していきました。
有名パティスリーも抹茶を使ったスイーツを展開し、抹茶マカロンや抹茶ケーキなど飲料としての抹茶以外の要素も人気を博しています。オーガニックやビーガン対応の商品も多く健康志向と味の両立を求める層に広く支持されています。

スイーツにも抹茶が多く取り込まれ始めている

■アジア(中韓)「トレンド・美容」

中国や韓国では、抹茶は「美容とトレンドの象徴」として若者を中心に人気を集めています。
中国では日本文化への関心や美白・デトックス効果への期待から、抹茶入りのドリンクやスキンケア食品が注目されています。
一方、韓国ではSNS映えするビジュアルも注目され、抹茶ラテや抹茶ケーキ、かき氷などがカフェの定番メニューとなりつつあります。
どちらの国でも、抹茶は健康・美しさ・かわいさを同時に満たせる食品として支持されており、K-POPアイドルの影響もブームを加速させています。

抹茶ラテやラテアートもSNSに多く投稿されている

■オーストラリア「オーガニック志向」

オーストラリアでは、抹茶は「ナチュラルでヘルシーなライフスタイル」に合う飲み物として人気を集めています。特にメルボルンやシドニーなどの都市部では、サードウェーブコーヒー文化の広がりとともに、抹茶ラテやスムージーがカフェメニューに定着。
オーガニック志向の高まりやプラントベース(植物性)食への関心も追い風となり、抹茶×アーモンドミルク、抹茶×ビーガン焼き菓子など多彩なアレンジが生まれています。健康と持続可能性を意識する層に支持されています。

ZEN(禅)と抹茶

抹茶が流行する背景のひとつとして「禅(ZEN)」が海外で大きな注目を集めていることが挙げられます。「坐禅」という瞑想法でよく知られる「禅」ですが、海外でも禅による瞑想や精神性が「心を整える手法」として注目されるようになりました。
特にiPodやiPhoneなどで知られるアップル社の創業者であるスティーブ・ジョブズは、禅を社員プログラムに取り入れたほどです。
「kawaii(可愛い)」と言う言葉は、日本のポップカルチャーの象徴的な言葉として定着し、フランス語、スペイン語、韓国語などでもそのまま使われていますが、ZEN(禅)もまた同様に西洋において「zen meditation」や「zen lifestyle」という表現で、広く浸透しはじめています。

禅と抹茶、一見関係なさそうですが、茶道のルーツは禅僧の抹茶を飲む習慣にあり、海外では等しく和の心、またマインドフルネスの手段として受け入れられています。

抹茶は臨済宗の開祖栄西により持ち込まれたとされている

進む抹茶の供給制約

「供給制約」という言葉もあまり耳にしたことがないかも知れません。人手不足や物流の停滞などにより需要に対して供給が追いつかない状態を指します。
実は国外の抹茶需要が伸びる中、国内では生産が追い付かない現実があります。
これには作り手の不足であったり、抹茶をつくる工程が通常の緑茶の生産より時間がかかるといった理由があります。
特に抹茶は茶葉を粉末にする際、熱を出さないように挽いていく必要があります。抹茶はとても繊細な素材であり摩擦熱が加わってしまうと、香りが飛んでしまったり茶色く変色してしまったりと、抹茶の魅力を損ねてしまいます。
ゆっくりと丁寧に挽く必要がある。これだけでもかかりますが、抹茶は栽培に適した地域が限られていることもあり、世界需要の膨らむ中、生産が追い付かないことが懸念されています。

石臼の温度、室温ともに低く保つ必要がある。

まとめ

抹茶は今、国内需要の減少に反し世界的なブームが来ています。
ブームの背景には世界各地それぞれの価値観やライフスタイル、国民性などが影響しており、抹茶のもつなさまざまな魅力が評価されています。またブームの理由のひとつには日本の誇る「和の文化」の影響があることも間違いありません。
一方で、年々拡大する市場規模に国内での生産が追い付かず供給制約の問題も深刻化しています。そこには抹茶の生産には多くの工程があり時間がかかることや、複雑な製法を伝承する後継者がいないといった理由があります。

「ジャパニーズクオリティ」という言葉は主に日本製の工業製品について使われる言葉ですが、繊細な製法を必要とする抹茶は、まさに農業におけるジャパニーズクオリティの象徴と言える食品と言えるのではないでしょうか。

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