古米の方が美味しい?新米が売れない、新米と古米の違いを解説!
新米が売れないというニュースを多く見かけます。
米不足から米の価格が高騰した令和の米騒動(令和6年)から1年、新米が発売されましたが価格が下がらないこともあり、大きな買い控えが起こっているようです。
さらには、備蓄米や昨年令和6年度産のお米も多く残り、過去にない程さまざまな種類のお米がお店で取り扱われています。
新米の価格に関しては皆さん様々な意見をお持ちだと思いますが、本記事では価格の話を抜きにして、どのお米を選ぶべきか?その参考になるようなお話が出来ればと思っています!
参考:Yahoo!ニュース「新米が売れない…JA福井県の販売量が去年の半分に」
https://news.yahoo.co.jp/articles/

お米の味を見極めることは難しい
突然ですが、お米を食べた時にその銘柄までわかる!という方はいらっしゃいますでしょうか?実はお米の味を食べて判断することは非常に難しいと言われています。
備蓄米を食べたときに、それが備蓄米だとわかる(不満を持てる人)は10%程度という調査結果を以前ご紹介しました。しかし、これも「備蓄米である可能性」を示唆されての数字です。
もし何の告知もなくただ備蓄米を提供された場合、それを備蓄米だと断定することはほぼ不可能だそうです。備蓄米の味に関して、料理研究家のリュウジさんは、ご自身のXの中で「海原雄山並みの舌」と評しています。
ワインのソムリエのように、お米の銘柄や味に詳しい「米ソムリエ」という資格があります。
その米ソムリエの資格所有者の方でも、お米の銘柄を言い当てる、いわゆる「利き米」はできないと言われています。銘柄を当てられる可能性があるのは「コシヒカリ・あきたこまち・ササニシキのいずれか」のように少ない選択肢での選択問題の場合のみだそうです。
豊富な知識を持っていても難解だといえるほど、お米の味を正確に感じ取るのは難しいのです。
とは言え新米は分かる!
古米と備蓄米を食べた際に味を感じ分けることは難しいのですが、同様に新米を食べた際にその米が新米であることがわからないかというと、それはそうでもないと思います。
というより、見た目だけでもある程度違いが分かります。
少なくとも筆者は今年はじめて新米が食卓に並んだ際にそれが新米であることに気づきました。
下の写真が備蓄米と新米の比較なのですが、表面を覆うデンプン(粘り気)の量が新米の方がかなり多く、白く透き通るイメージです。

■新米は一口でわかるほど柔らかい
新米を食べると、新米を食べることが日常化していなければ、おそらく多くの方はそれが新米であることに気が付くと思います。
新米について非常によく言われることですが、新米は古米と比べ柔らかく粘り気があります。また旨味も豊富だと感じられると思います。新米はもともと水分量が多いのですが、加えて、細胞壁を構成するセルロースがまだ硬く結合しておらず水分を吸収しやすいという特徴をもちます。
この違いはかなり感じやすく、特にその年にはじめて食べる新米では、はっきりと新米であることがわかるのではと思います。
■比べてみると古米臭も
また筆者の妻いわく「米櫃(こめひつ)のにおいが違う」そうです。たしかに、一合での差は少なくとも、お米をまとめて保存している米櫃の中のにおいは新米と古いお米では違いました。
一言でいえば、古いお米のほうが酸っぱい空気がたまっている感じがします。よく「古米臭」などと呼ばれますが、お米の脂質が酸化した匂いが古いお米を入れた米櫃からは感じられました。
しかし、あくまで「比べてみると」です。新米を米櫃にうつしたことで、やっと気づきました。
新米VS古米、どちらが美味しい?
新米と古米のどちらが美味しいかという話をするのであれば、多くの方が「新米」と答えると思います。私個人もそのことに一切の異論はありません。
しかし味は結局個人の感覚ではないか?と言われればそれまでと言う気もします。新米の美味しさを客観的に決定づけるような基準は存在するのでしょうか?
■食味という基準
実はお米には「食味」というお米の美味しさを点数化した基準が存在しています。
牛肉では「A5ランク」といった評価を耳にしたことがあると思いますが、お米の場合「特Aランク」を最高評価とし、日本穀物検定協会により検査員により試食され決定されています。
ん?検査員?人が評価するの?と思われた方、ご安心ください。
この審査は「食味計(機械)」と「官能検査(人間)」によって評価されています。そしてこの食味計を用いた検査が人の感覚を介さない客観評価と言えると思います。
■食味計による測定
食味計による審査は「食味値」として100点満点で評価され、客観的な評価の目安という事が出来ます。人の好みに左右されない、安定したデータを得ることができます。
食味計はお米の成分を測定し点数化しています。お米の美味しさに影響するとされるアミロース、タンパク質、水分、脂肪酸などの成分量から点数を決定する仕組みです。
食味計の測定において、日本の標準値は70点前後、70%の人が美味しいと感じるのが70点とされており、80点を超えるものは「良食味米」と呼ばれています。
食味計のメーカーにより、多少の差異はあるものの、中には100点を獲得したという事例も報告されています。
参考:食味値100点が出た!新潟県南魚沼市おのづか米工房
https://shiozawa-dash.jp/sp/komedukuri.htm
■古米やそれ以前のお米の食味は低くない
新米と古米どちらが美味しいのかというテーマで話を進めてきましたが、実は、意外と言ってよいか分かりませんが、古米以前のお米の食味は決して低くありません。
そして収穫から年を経るごとに劣化していくように考えがちですが、実際そんなことはありません。先ほど紹介した通り、日本の標準値は70点前後、70%の人が美味しいと感じるのが70点なのですが、古米から古古古古米までの全ての年の備蓄米で、70点を超える品質評価値が計測されたことが発表されています。
年産 | たんぱく(%) | 水分(%) | 品質評価値 |
---|---|---|---|
令和6年産 | 5.6 | 13.5 | 75 |
令和5年産 | 6.2 | 13.7 | 76 |
令和4年産 | 7.0 | 13.8 | 71 |
令和3年産 | 6.4 | 13.7 | 74 |
■古米以前のお米の方が料理に向いている場合も
新米は確かにお米単品では美味しいと言えるのかとは思いますが、古米の方が優れていると言える場合も存在します。それは主にお米を調理する場合です。
特に、お寿司の他、炒飯やパエリアなどの炒め物、炊き込みご飯、カレーライスなど、新米では柔らかいことが少しマイナスにはたらいてしまう場面も少なくありません。
また、お肉など味の強いものに対しても、お米自体の主張の少ない古米の方が適しているされることもあるため、食味値=お米の評価という事は難しく、新米と古米どちらが良いかは一概に決めることができません。
新米とは旬の食材!
上記のような理由から、新米については「その時期だけ食べられる特別な味」と考えるのが良いと思います。お米に限らず「初物」や「旬物」という言葉があります。
新米がその最大の特長である柔らかさを維持できる期間は半年からどんなに長くても一年以内であり、その期間だけ味わうことのできる特別な食感・味わいだと言えると思います。
それこそが新米を食べる醍醐味であり、新米を買う理由と言えるのではないでしょうか?

保存方法で味の劣化は抑えられる
ここまでお読みいただいた皆さんの中には、古米以前のお米は味に大差がないのか?と疑問に思われている方もいると思います。この疑問に対する回答ですが、筆者の舌では「食味値の上では大差がない」としか答えることができません。
筆者は海原雄山でも山岡士郎でもないため、正直新米以外のお米を食べて区別することができません。
もちろん、食事のたびに「今食べているお米は備蓄米であるかもしれない」という可能性を考え、神経を研ぎ澄ませて口に含めば、ある程度はわかるのかもしれません。ただ普段の食事の中でそんなこと考えるか?という話になると思います。
古米臭にしても、お米だけを食べるのであればともかく、食卓には色々な匂いを放つ料理が並んでいます。その中で古米臭の存在感はほぼ皆無だと感じてしまうほどです。
令和6年産と令和5年産のブレンド米、古古古米(令和4年産)、コンビニ弁当で取り扱われた際に古古古古米(令和3年産)のお米を食べてきましたが、正直どれも美味しい以外の感想を持ちませんでした。
美味しんぼ界では海原雄山はおろか、おそらく栗田さんや富井副部長にも劣る舌でしょう。
※注:栗田さんは第一話で水道水・井戸水・鉱泉水を飲み分けるほどの舌を持っています。
実は保存方法、特に温度と湿度の管理を徹底することでお米の質は大きく下がらないというデータがあります。
備蓄米について多く言われる「お米が硬い」と言うのは、厳密にはそれだけではないと思いますが、米粒の中の水分が抜け硬質化していくことだと思います。実際に新米と古米を比べると、水分量が3~5%ほど違うそうです。しかし古米とそれ以前のお米を比較すると、含有される水分が全然減っていないというデータがあります。
新米と古米を食べ分けることはできますが、それ以前のお米の違いを感じることは極めて難しいのではないでしょうか?
年産 | たんぱく(%) | 水分(%) | 品質評価値 |
---|---|---|---|
令和6年産 | 5.6 | 13.5 | 75 |
令和5年産 | 6.2 | 13.7 | 76 |
令和4年産 | 7.0 | 13.8 | 71 |
令和3年産 | 6.4 | 13.7 | 74 |

備蓄米はそろそろ販売終了?
販売期間が延長された政府備蓄米ですが、10月にはいり販売終了となる店舗が多くみられるようになりました。筆者のよく訪れる量販店でも今週「今後の販売はありません」という貼り紙が掲示されていました。
筆者は備蓄米が今後も販売されることを希望しています。世間では備蓄米はあまり成果が上がらなかったように言われていますが、筆者はそんなことはないと思っています。そう言える理由は大きく二つあり、ひとつは「備蓄米(古いお米)が十分に食べられるレベルにあるとわかったこと」、そしてもうひとつは「買う人がしっかりといるという事実がわかったこと」です。
適切な表現かは分かりませんが、社会実験としても大きな意味があったと言えると思います。政府としても備蓄米の需要がわかり、認知度も高まり、流通の問題などを確認することができた。そもそも備蓄米という存在を知ったのが初めてという人も多かったのではないでしょうか?筆者はもちろん今回の件で初めて備蓄米を知りました。
販売という側面に関して、もちろんその年のお米の収穫状況や、市場に不足しているようであればで全然かまいません。ただ価格という誰もが気になる問題を前に選択肢が増えるのは非常に良いことだと感じました。