新型コロナ「ニンバス」流行の兆し?ペットや家畜への感染・対策は
2019年、全世界を震撼させたコロナウィルスですが、今また新たな変異種が日本でも流行しようとしています。このコロナウィルスは「ニンバス」と呼ばれ、激しいノドの痛みを引き起こすことが報道されています。
もちろん人間への感染が一番の心配事であるものの、人間が感染した場合、共に生活するペットや家畜への影響はあるのでしょうか?また逆に動物から人間へ感染する可能性は?
本記事では、新型コロナ「ニンバス」の症状や特徴とともに、ペット・家畜の感染リスクについて解説していきたいと思います。

新型コロナ「ニンバス」とは?
新型コロナウィルス「ニンバス」は、正式名称を「NB1.8.1」と言います。
2025年1月末に初めて確認されて以降、シンガポールや香港など、世界各地で流行が拡大しています。
■オミクロンの派生株
2025年9月現在、新型コロナとされる「ニンバス」は、オミクロン株の派生とされています。
オミクロン株自体は2021年に登場したコロナウィルスであるため、あまり覚えていないという方も多いかも知れません。
オミクロン(ο)とはギリシャ文字の15番目の文字にあたります。コロナウィルスはアルファ(α)ベータ(β)のようにギリシャ文字の順序に応じて名前が付けられています。その中で使われていない文字が2文字だけあり、オミクロン株はコロナウィルスの13番目の変異種となっています。
■ニンバスの名前の由来は「雨雲」
「ニンバス」は、ラテン語の「nimbus」にちなんでいます。この言葉は「雨雲」「大群」「豪雨」などを意味しています。「ニンバス」は世界保健機関(WHO)の定めた正式名称ではなく、公衆やメディアで扱いやすくするために付けられた愛称のようなものです。「NB1.8.1」ではあまりに呼びづらいから、という認識で間違っていません。
「ニンバス」は「雨雲」を意味しますが、例えば孫悟空の乗る筋斗雲は英語で「Flying Nimbus」、もしくは単に「Nimbus」と呼ばれています。ハリーポッターの乗るほうきの名前も「Nimbus2000」だとか…

「ニンバス」の特徴は?
突如日本での感染も広がり、注目を集めている新型コロナ「ニンバス」ですが、どのような特徴があるのでしょう?
■オミクロン株の特徴を継承している
オミクロン株と言えば、その感染力はデルタ株の約3倍と言われていました。これはオミクロン種が高い「人間の細胞への結合力」と「人間の免疫に対する耐性」を持っていることが理由です。
オミクロンの派生であるニンバスは同様の特徴を持っており、人間にとって感染しやすい(侵入を防ぎにくい)ウィルスであると言えます。
割合では、人間のコロナへの免疫が3~4割低減されるとされています。
■基本的には風邪とかわらない症状
ニンバスの初期症状は一般的な風邪と大差が無いようです。そのため、自身での判断は非常に難しいとされています。ニンバスの初期症状として以下のような症状があげられます。
【ニンバスの初期症状】
・鼻水
・発熱
・悪寒
・倦怠感
・持続性の咳 など 風邪によく似ている。
■最大の特徴はのどの痛み
ニンバス最大の特徴は喉の痛みです。比喩表現として「カミソリの刃を飲んだような痛み」と言われており、欧米ではニンバスは「カミソリ刃の喉(razor blade throat)」とも呼ばれています。
このような症状が起こることは、上気道の症状が主体であったオミクロン株の特性を引き継いでいると言えます。
しかし、感染者すべてにこのような喉の痛みが発生するわけではなく、喉の痛みを訴える患者は全体の半数以下のようです。また、コロナ初期に言われていた「味やにおいが感じられない」と言った症状は起きにくいとされています。

■重症化しやすいという報告はない
コロナウィルスと言えば、当時、重症化リスクが多く報道されていましたが、現在のところニンバスに「重症化率」や「致死率」が高いという報告はありません。
このことは世界保健機関(WHO)からも「他の流行株より重篤な疾患を引き起こすことを示していない」と発表されています。
コロナにかかったら何日休めばいい?
話の本筋から外れますが、気になる方も多いと思いますので「コロナにかかったら何日休むべきか」について記載します。これについて法的な規制はありません。
■学生の場合
学校保健安全法施行規則の中に以下のように書かれています。
『新型コロナウイルス感染症への感染が確認された児童生徒等に対する出席停止の期間は、「発症した後五日を経過し、かつ、症状が軽快した後一日を経過するまで」を基準とすること』
つまり、発症後5日は最低でも登校禁止、そして5日経っていても症状が回復していなければダメ、さらに回復から一日は様子を見る必要があります。
参考:文部科学省「学校保健安全施行規則」
https://www.mext.go.jp/content/20230427-mxt_ope01-000004520_2.pdf
■会社員の場合
まず前提として感染症法に基づく陽性者への外出自粛要請や就業制限はありません。
厚生労働省のホームページでは以下のように書かれています。
『令和5年5月8日以降、新型コロナ患者は、法律に基づく外出自粛は求められません。外出を控えるかどうかは、個人の判断に委ねられます。周囲の方や事業者におかれても、個人の主体的な判断が尊重されるよう、ご配慮をお願いします。』
ということで、「制限」はありませんが「推奨」される対応が同ページに記載されています。
その内容を要約すると発症から5日間、かつ症状の回復から24時間内の外出の自粛が推奨されています。
繰り返しますが、学生の場合と異なり、あくまで推奨となります。
参考:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html
ペットや家畜には感染するのか?
ここから本題となります。ニンバスはペットや家畜、その他の動物にはうつるのでしょうか?
実はニンバスがペットや家畜に感染するかは、まだデータがなく明確に答えることはできません。
ただ、今までのコロナウィルス全体(アルファ株~オミクロン株)を考えた場合、ペットが感染した例はありますが、人間のように大量感染が確認されたことは「一例」を除きありません。
以下は「ニンバス」ではなく、過去のコロナウィルスでの統計となります。
■犬・猫は飼い主が感染した場合の15%が陽性
人間からペットへの感染例はいくつか報告されています。
イヌ・ネコでは、飼い主が感染していた場合に、その15%がコロナ陽性であったという結果が出ています。この15%をどう評価するかにもよりますが、人間同士と比較し、感染率は低いことは明確だと言えると思います。
また陽性であったイヌからは明確な症状は出ておらず、ネコでは呼吸器・消化器に症状が確認されたことが報告されています。これはネコのコロナウイルスの感受性が他の動物種よりも高いためとされています。
その他の動物では、動物園のライオンやゴリラが飼育員を通し感染した疑いがあるという報告があがっています。

■主要な家畜への感染は報告なし
一方で、牛や豚・ニワトリと言った代表的な家畜がコロナに感染した報告はありません。
このことは農林水産省のホームページで発表されています。コロナウィルスにより、狂牛病・豚コレラ・鳥インフルエンザのように家畜が大量殺処分となった事例は現在まで発生していません。
農林水産省:新型コロナウイルス感染症について(動物を飼っているみなさまへ)
https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/covid-19/summary.html
■唯一感染が拡がった動物「ミンク」
オランダで感染が拡がり、コロナウィルスで唯一の大量殺処分となった動物が「ミンク」です。
なぜミンクが?と疑問に思うかも知れません。
これは、コロナウィルスは細胞の「ACE2受容体」という部分にくっついて感染しますが、ミンクの持つ「ACE2受容体」が人間とよく似ているためだと言われています。

ペットや家畜から人間に感染する可能性は?
厚生労働省のホームページでは「これまでのところ、新型コロナウイルスがペットから人に感染した事例は報告されていません。」と明記されています。このページ自体は令和4年3月のものですが、それ以降新しい情報は出ていません。
家畜の中では唯一、上記のミンクから人間に感染した「可能性」が報告されていますが、断定には至っていません。
厚生労働省:動物を飼育する方向けQ&A
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/
家畜を確実に守るにはネットを
コロナウィルスの家畜への感染については、オランダのミンク以外に大きな例がありません。
そのため過剰に防御する必要はないと思いますが、不安に感じるようであれば防鳥ネットなどでの物理的な隔離が良いと思います。
網目の大きさについてですが、現状でコロナウィルスを運ぶ可能性が比較的高いと考えられる動物は「ネコ」そして「ヒト」です。どちらも体の大きい哺乳類ですので、特別なものは用意せず、鳥インフルエンザや豚コレラの対策ネットを代用で構わないと思います。

まとめ
新型コロナ「ニンバス」については、特に国内ではまだデータが出揃っていないのが正直な所だと思います。ただ、過去のコロナウィルスを参照する限り、ペットや家畜への影響はかなり少ないと言って間違いがないと思います。
とは言え、厚生労働省のサイトにも書かれている通り『新型コロナウイルス感染症に限らず、動物由来感染症の予防のため、動物との過度な接触は控えるとともに、普段から動物に接触する前後で、手洗いや手指用アルコールでの消毒等を行う』ことが人間・動物の双方の為に重要な対策だと思います。
実はウィルスは変異を繰り返すほど、攻撃力が弱くなることが知られています。
これはウィルスが変異する目的自体が「繁殖・生存」であり、依り代となる感染者を死に至らしめることは、細胞に取りついたウィルスも同時に死滅することを意味するからだそうです。
要は「多くの生物に感染すること」「感染した生物から別の生物へ伝播すること」の2点を考えた時に、感染主に対して高い攻撃力を持つことは、ウィルスにとってマイナスに働くという事です。
たとえ感染力は上がっても、いつかコロナという存在が風邪と全くかわらなくなる日が訪れるかもしれません。