【鳥頭】実は人間以上?鳥の記憶力を科学が解析。あのニワトリでさえ?

【鳥頭】実は人間以上?鳥の記憶力を科学が解析。あのニワトリでさえ?

【鳥頭】実は人間以上?鳥の記憶力を科学が解析。あのニワトリでさえ?

「鳥頭」という言葉あります。鳥は他の生物、特に哺乳類と比較し記憶力が悪いとされることから「物忘れがひどい人」を指す言葉として使われています。
しかし、実生活の中で多くの方が明確な違和感を抱いているのではないでしょうか?

「鳥って、どう考えても記憶力いいよね?????」

筆者は農業関係の仕事に携わり多くの鳥害対策を試みてきましたが、鳥という生物は驚くほど頭が良く、その対策には悩まされ続けています。
本記事ではそんな鳥の頭の良さ、特に「鳥の記憶力」について触れて行きたいと思います。

この端正なルックス。絶対頭いい(確信)

鳥の記憶力が低いとする慣用句

そもそも「鳥は記憶力が低い」となぜ考えられているのでしょう?その背景には、実はこんな言葉があります。

■鶏は三歩歩けば忘れる

鳥の記憶力は低い、その定説の根拠となっているのが「鶏は三歩歩けば忘れる」という言葉です。一瞬で忘れてしまうと言う意味ですが、もちろん三歩については過剰な脚色だと考えられます。
言葉の由来・出展については不明ですが「犬は芸を覚えるが鶏は芸を覚えない」ことがこの言葉の根本にあるそうです。またそれだけでなく鶏は行動が単調で、同じ場所をウロウロしたり同じ動きを繰り返すことから「忘れっぽく見える」ことが三歩で忘れるとされる要因となっています。

しかし、ここで注目していただきたいのは「鶏」という漢字です。そう、「鳥」ではなく「鶏」。
「鶏」はニワトリを指す漢字です。このことは非常に重要です。
カラスを例としてあげると約700gの身体に10gほどの脳を持っています。対してニワトリは約1kgの身体に対し脳はわずか3gです。この差は「チンパンジーと羊ほど差がある」とも揶揄されています。
多くの鳥はニワトリによる風評被害を受けているだけなのかもしれません。

え?私たちのせい…??

■鳥頭は英語でも「まぬけ」を意味する

どうやら「鳥は頭が悪い」は世界共通とも言える認識のようです。「bird-brain(鳥の脳)」という英単語がありますが、これは「まぬけ、愚か者」を意味しています。
鳥の知能が低いという見解に、人類は洋の東西を問わず達していたようです。こちらは鳥の種類を「chicken(鶏)」に限定していないため、弁解のしようがありません…

ニワトリは脳が小さい。しかし…

ニワトリは哺乳類はおろか、全てではありませんが他の鳥と比較しても脳の比率が少ない。これは紛れもない事実です。しかし脳が小さいからといって記憶力が悪いという事にはなりません。

■記憶力自体は人間と変わらない?

慶応大学生物心理学の教授が「遅延見本合わせ」という方法でニワトリの記憶力をテストした研究があります。最初に一枚の画像を見せ、一定時間後に同じものを選べるか?という単純な試験方法です。この結果として、ニワトリは30秒後でも記憶を維持し正解を選ぶことができたそうです。
これは人間であっても同じ30秒前後の記憶維持となり、ニワトリと人間に特に短期記憶における記憶力の差がないことが判明しました。

短期記憶なら人間にも負けない!

■興味のないことは覚えない

ニワトリと人間に短期記憶での記憶力の差はないとして、人間の方がすぐれていると感じられるのは、人間が頭の中で繰り返し考えることで短期記憶が長期記憶に変化するからだそうです。
人間はテストであると言えばそれを覚えようとし、繰り返し考えると思います。しかしニワトリはそんなことお構いなしです。
仮にこのテストが「水飲み場の場所」であったらニワトリは決して忘れないだろうとされています。興味のないこと、生きるために必要のないことに関心を示さないのです。

結論、鳥の記憶力は良い!

結局、鳥は記憶力が良いの?悪いの?その結論が科学的に解析されています。結論として「鳥は記憶力が良い(極めて高い種もいる)」。さらには記憶力が悪いなら悪いなりの理由があるのです。

■進化の証。遺伝子変異による記憶力

マミジロコガラという主に北米に生息する鳥がいます。体長がわずか12cmながらマミジロコガラはエサを隠した数千の場所を覚えているとされており、その記憶力の謎を解くため、血液採取が行われ遺伝子の分析が行われました。
その結果分かったのは、脳で学習と記憶を司る「海馬」に関わる97の遺伝子の変異でした。この変異した遺伝子を多く持つ個体ほど記憶力が高いことが明らかになりました。
遺伝子による能力であるため当然世代を超えて引き継がれます。鳥の高い記憶力は進化の証だったのです。

マミジロコガラ。その記憶力は遺伝子の力!

■記憶力を落とすのも生存能力

一方で記憶力が進化したマミジロコガラのような鳥は「新しい餌場を見つけづらい」という研究結果も出ています。餌場を多く記憶しているばかりにその記憶に頼ってしまうという事ですが、例えば急な吹雪のような環境変化に適応できない可能性が示唆されています。
逆に記憶力が低い(長期記憶が苦手)種というのは新しい餌場を探す力に富んでおり、柔軟で高い生存能力を獲得しているとも言え、それゆえに長期的な記憶力を必要としないのです。

参考:驚異の記憶力を持つ鳥、マミジロコガラ
https://karapaia.com/archives/52331332.html

記憶力のよい鳥ランキングTOP5

前述の通り現代では多くの鳥が長期的な観察や科学的な研究の対象となっており、その高い頭脳・記憶力が認められています。特に記憶力の高いとされる鳥をランキング形式でご紹介します。

■1位:カラス

第一位であるカラスは、もはや説明不要かもしれません。農作物の鳥害被害額も第一位である、特に農業に関わる人にとってはにっくき鳥です。
人間の仕掛けるあらゆる罠を覚え突破していく鳥で、案山子やCDなど古来より多くの方法が思考され、カラスの前に敗れ去っていきました…(※一時的な効果はあります!)
その記憶力はすさまじく、カラスの研究を行っていた研究員の顔を、なんと10年後も認識したとの研究報告がされています。これほどの長期記憶が可能な生物はなかなか存在しないのではないでしょうか?
市街地であっても何食わぬ顔で生活し、人間を出し抜いてエサを得ている点においても賢さは折り紙付きと言えるでしょう。お願いなのでこれ以上ゴミ場を荒らさないでください!

誰もがイメージする頭の良い鳥。記憶力も堂々の第一位!

■2位:カケス

第二位はカケスです。聞き馴染みのない鳥かも知れませんが、日本国内でもさまざまな樹林に生息する、全長30cmほどの雑食性の鳥です。
カケスの能力は、前述したマミジロコガラと同様に数千カ所に隠した食べ物を正確に記憶できるというものです。場所や食べ物の種類だけでなく、隠した時間さえも同時に記憶しているとされています。
しかし真に驚愕するエピソードは「それらの食べ物の腐敗速度を予測し、早く傷むものから先に消費する」という点です。人間にだってほぼ不可能な気がします…控え目に言ってバケモノです。

数千カ所の位置を覚えるだけでなく、消費すべき順を把握!?

■3位:ヨウム

第三位のヨウムは、一言で言えば頭の冠のないオウムです。ただしオウム科ではなくインコ科に属します。オウムと言えばオウム返しでしょ?と思うかもしれません。
しかし、ヨウムは人間の言葉の意味を理解し適切に使う、平たく言えば「会話」ができるのです。当然ですが、そのためには人間の言葉を正しく記憶する必要があります。
特に有名なのが「アレックス」という名のヨウムです。2007年に亡くなってしまいましたが、その姿を今でもYouTubeで見ることができます。

■4位:ハト

第四位はハトです。ハトも非常に記憶力のいい鳥です。
伝書バトとして活躍した事実が物語るように、一度通った山や建物の形を正確に記憶することができます。その脳内には数百枚の画像を記憶し、長期間保持できるとされています。
そして困ったことに一度エサをくれた人間の顔を忘れない、強い執着心も併せ持っています。
2001年の日本国内での実験で、平仮名とカタカナの区別が可能であることも明かされました。

エサをくれる人の顔は絶対に忘れない!

■5位:シジュウカラ(カラ類)

第5位はシジュウカラです。遺伝子変異でご紹介したマミジロコガラと同じく「カラ類」の鳥です。
シジュウカラは日本全国に分布し、森林から市街地にまで生息する鳥です。
ケンブリッジ大学の研究チームにより、高度な「エピソード記憶」に近い記憶能力を持つことが発表されました。エピソード記憶とは単にモノを覚えるのではなく「いつ、どこで、何があったか」という経験に基づき記憶する能力のことです。エピソード記憶を用いることでシジュウカラは「法則性」を理解し、必要な時期に必要な場所へ赴くことができるのです。
それだけでなくシジュウカラは独自の言語を持ち、グループ内で共有・伝達することが国内の研究で発表されています。

高度な記憶法を使用する鳥、シジュウカラ。

参考:NHKサイエンスZERO「鳥の言葉を証明」
https://www.nhk.jp/p/zero/ts/XK5VKV7V98/blog/bl/pkOaDjjMay/bp/p0XWGW8MX7/

高い記憶力を持つ「鳥」に対抗するために

最後に高い記憶力を持つ鳥達から野菜・果物を守る仕事をしている会社らしく、鳥対策について少し触れておきたいと思います。冒頭に書いたように農業関係の仕事をしていると、鳥の記憶力の高さには本当に嫌気がさしてきます。(感心するという次元はとうに過ぎ去っています)

■すべてを「一時的な効果」にしてしまう鳥達…

鳥の記憶力は本当にすごく、多くの対策を「一時的な効果」に変えてしまいます。
その理由は、多くの対策が「鳥に対する威嚇」であるためです。発砲音やCDなどを用いた嫌忌光などは直接危害を加えるものではないため、鳥が安全だと認識してしまうとそれ以降の効果の持続が難しくなってしまいます。
しかし実際に鳥にダメージを与えようとすると、今度は人間が誤射などに巻き込まれる可能性もでてきますし、もちろん鳥獣保護法の兼ね合いもあります。

■網ってのはすごい発明

そんな中オススメしたいのは非常にシンプルで「網(ネット)」を使った対策です。
網の特長は、慣れたとしても通り抜けられない、傷つけない、そして何より精密機械でないため安価、加えてメンテナンスも楽チンです。

漫画原作のアニメ『テラフォーマーズ』の中で膝丸燈(主人公)も、次のように述べています。
「網ってのはすごい発明。 紐で相手を縛ろうとすると抵抗されるが、 網は相手が動くほど自然と絡まっていくんすから」

そう、網はすごい発明です。だって縄文時代から存在し、今もほぼ同じ構造で使われているんですよ?
皆様、是非鳥の対策には網をご採用ください!

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