日本が亜熱帯化?気候変化による災害・作物への影響は?【地球温暖化】

日本が亜熱帯化?気候変化による災害・作物への影響は?【地球温暖化】

日本が亜熱帯化?気候変化による災害・作物への影響は?【地球温暖化】

地球温暖化により「日本の亜熱帯化が進んでいる」というニュースを目にしたことがあるでしょうか?
地球温暖化の主原因となる二酸化炭素による温室効果は、実は今から200年前となる1820~30年頃にはその可能性が示唆されていたそうです。
二酸化炭素濃度の正確な計測が始まったのは1960年代のこと。国際問題として正式に認知されたのは1988年以降とされています。
少しずつ世界規模での気温上昇が引き起こされていますが、日本が亜熱帯化することにはどのようなリスクがあるのでしょうか?

日本が亜熱帯化!?

亜熱帯とは?代表的な5つの気候区分

世界の気候は大きく5つに分類されています。日本の多くの地域は現在この中で「温帯」と呼ばれる気候帯に分類されています。気候区分については、気候学者の「ケッペン」が体系化したことから「ケッペンの気候区分」と呼ばれ、A~Eの記号を用い表されています。中学~高校の地理で習うので聞き覚えがある方も多いのではないでしょうか?

こんな世界地図見たことありませんか?

■熱帯気候(A)

とにかく暑い!
赤道付近の非常に暑い地域が属する気候区分です。年間を通して高温で、気温の低い月であっても平均18℃以上となります。雨季・乾期はあるものの基本的には雨が多く、アマゾンなどに代表される熱帯雨林も多く見られます。
作物ではバナナやコーヒーの栽培に適しており、産地となっていることが多いです。

■乾燥帯気候(B)

とにかく乾いている!
その名の通り非常に乾燥した地域で、砂漠や草原にあたるステップ地帯が該当します。とにかく雨が圧倒的に少ない地域で、年間を通しても250mm以下の降水量です。オアシス周辺以外での農業は難しく、遊牧がメインとなっています。乾燥帯代表的な地域として「サハラ砂漠」などがあげられます。

■温帯気候(C)日本の大部分が属する

日本の大部分はこれ!
主に沖縄や北海道の一部を除く日本の大部分が属する気候帯で、四季がはっきりし、夏暑く冬は寒いことが特徴です。年中安定し雨が降り比較的気温も温暖であることから、稲作・畑作・酪農と言った農業も盛んで、多くの都市が発展しています。
日本以外でもヨーロッパやアメリカ、中国の東部など多くの国がこの気候帯に属しています。

■冷帯気候(D)

かなり寒い!
夏が短く、長く寒い冬が続きます。降水の大部分は雪となり、植物にも厳しい寒さのため、植生として針葉樹林が広がっています。農業に関しては、ジャガイモや小麦といった寒さに強い作物を育てる「寒冷地農業」が行われています。
冷帯をイメージするときは、ロシアやカナダ、アラスカなどと言った高緯度帯の国や地域を想像するとよいでしょう。

■寒帯気候(E)

とにかく寒い、寒いなんてものじゃない!
年間を通して非常に寒く、気温は最暖月でも10℃未満の地域が該当します。雨はほぼ無く雪、もしくは雹が降り注ぎます。永久凍土といった決して溶けることのない凍結地帯も少なくありません。
北極、南極周辺や、シベリアなどが属します。植物はその寒さからコケ程度しか植生しておらず、人間が生活するにも適しているとは言えません。それでも少数の民族が居住しており、狩猟や漁業など生業としています。

基本的な5つの区分を見ると、実は現在温帯である日本が近づいているとされる「亜熱帯」が登場しません!亜熱帯とはいったいどのような気候帯を指すのでしょう?

亜熱帯は温帯と何が違うの?

亜熱帯とは、「熱帯」と「温帯」の中間にあたる気候帯です。「亜」という文字は「何かに次ぐ、何かに準じる」などの意味を持ちます。亜熱帯とは「熱帯に次ぐ気候」を意味します。
温帯より暑いけど熱帯ほどじゃない…何か中途半端に聞こえますが、それぞれの違いを考えて行きたいと思います。

■温帯と亜熱帯の比較

温帯と亜熱帯の違いは、そもそも気温が~、降水量が~など多くあるものの、文章では分かりにくい部分も多く、簡単な表にまとめてみました。

温帯亜熱帯
年間平均気温5〜18℃前後18〜25℃前後
真夏の気温30℃前後が中心35℃以上が多い
真冬の気温0℃以下になることも氷点下になりにくい
降水の特徴時期差はあるが安定し降水雨季、台風が多い
植生落葉広葉樹が多い常緑広葉樹が多い
野鳥の違いツバメやスズメなどヤンバルクイナなどが見られる
四季について春夏秋冬がはっきりとしている冬暖かく季節差が緩やか

気温というよりは気候として、温帯は四季がはっきりしているのに対し、亜熱帯は冬も比較的暖かく季節による気温差が緩やかです。亜熱帯では南国的な植物や動物が生育しやすく、常緑広葉樹が多くなるため紅葉も見られる機会が少なくなります。
日本の四季という風情は、温帯という気候区分によって成立していると言っても過言ではないかもしれません。

美しい四季も温帯ならでは!

日本が亜熱帯化しているとされる3つの理由

■気温の上昇

日本が亜熱帯化しているとされる最大の理由は、やはり気温の上昇です。
気象庁の発表では、日本の平均気温は過去100年の間に約1.3℃上昇したとされています。冬の寒さが緩やかになり、夏は猛暑日が増加するだけでなく、気温40℃を超える「酷暑日」が頻繁に見られるようになりました。

■植生、生物分布の変化

ソテツやバナナなど温暖な地域にしか生えない植物が本州南部でも見られることや、セミや蝶々、トンボなどの分布が北へ北へと広がってきています。シロガシラヒヨドリのような南方系の鳥も本州で見かける「北上傾向」が強まっています。

シロガシラヒヨドリ。生息域が年々北上中。

■気候現象が亜熱帯の特性に近づいている

台風やゲリラ豪雨などの熱帯低気圧により引き起こされる気候災害には熱帯由来のものが多く、日本の亜熱帯化を裏付ける一因となっています。梅雨や台風に伴う「年間降水量の増加」も亜熱帯化といえる要因のひとつです。この他にも高潮や熱帯夜など熱帯の気候が引き起こす現象が日本でも多く見られるようになってきました。

亜熱帯化による危険性

日本が亜熱帯気候に近づいていくことで、以下のような危険性が想定されています。

■台風の強大化、集中豪雨、ゲリラ豪雨の増加

温帯気候と比較し亜熱帯気候は、暖かく湿った空気が増え、雷雲や積乱雲が発達しやすくなります。その結果、台風やゲリラ豪雨といった集中豪雨がさらに激しくなり、回数も増加することが予想されます。
短時間における極端な雨量の増加は、河川の氾濫なども引き起こします。

■猛暑日、酷暑日、熱帯夜の増加

最高気温35℃以上の「猛暑日」、40℃を超える「酷暑日」、合わせて25℃を下回らない「熱帯夜」が激増することが予想されます。熱中症のリスクが高まり、屋外での活動が危険になります。
都市部ではヒートアイランド現象も発生し、暑さによる健康被害が懸念されます。

人間だけではなく、作物への影響も大きいでしょう。キャベツやホウレンソウなどの葉菜類、トマトやキュウリなどの果菜類は暑さへの耐性が低く、生育不良が起こりやすい傾向にあります。これにより栽培品種や栽培環境が、現在と大きく変わるおそれもあります。

■水不足による干ばつや渇水

非常にややこしいのですが、亜熱帯気候では全体としての雨量は増えますが、雨が局地化することにより一部の地域では水不足に陥る可能性も考えられます。
水不足は深刻な場合、農作物の枯死や水力発電の停止にもつながります。

多湿なのに一部では水不足に?

■土砂災害、地滑り

急な豪雨で地盤が緩み、土砂災害の発生が予想されます。特に山間部ではがけ崩れなどによる被害が拡大することが懸念されます。

亜熱帯化によるメリットはないのか?

まず大前提として「地球温暖化」は世界規模の問題であり、食い止めるべき大きな課題です。あくまで「日本が亜熱帯となった場合」のメリットと呼べるものはないのか考えてみたいと思います。

■亜熱帯にはリゾート地も多い

熱帯から亜熱帯にはリゾート地が多いと言う特徴もあります。
例えばバリ島やフロリダ、ハワイ、この他「永遠の春」と呼ばれるカナリア諸島などが該当します。日本で言えば沖縄、これが一番分かりやすいでしょうか。
温暖な気候は過ごしやすく、観光という意味では非常に人気だと言えます。

■栽培可能な作物が増える

植生が熱帯に近づくということは、作物も南国原産のものを多く育生できるようになるという事になります。
南国フルーツと言えば甘味が強く香り豊かで、果肉に水分がたっぷりジューシーなものが多くとても美味しですよね?見た目も色彩が強く色鮮やかです。パイナップルやマンゴー、ライチやパパイヤといった南国果実を日本の各地で栽培できる日も近いかもしれません。

ドリアンのような南国フルーツが日本各地で作れる?

■燃料コストが下がる

寒冷地に限って言えば、暖房費が下がると言うメリットもあります。普段の生活での暖房ももちろんですが、作物が凍霜害に襲われるリスクもある程度軽減される可能性があります。
この他にも降雪量が減り、豪雪地帯での雪かきなどの生活負担が減ることも考えられます。

まとめ

二酸化炭素の温室効果による世界規模での気温上昇は天候災害へと繋がり、人間のみならず動植物にも大きな影響を与えます。極端かも知れませんが、今まで育ててきた作物が育たず、今まで作れなかった作物が作れるといったような農作物の栽培環境の変化も考えられます。
日本の亜熱帯化については早ければ今世紀末とさえ言われています。もう聞き飽きてしまった言葉かもしれませんが「SDGs」や「サステナブル」といった、地球環境に負荷をかけない取り組みが、地球温暖化に限らず、美しい日本の四季を守るためにも必要と言えると思います。

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