身近にひそむ有毒植物|ナガミヒナゲシ等に注意!

身近にひそむ有毒植物|ナガミヒナゲシ等に注意!

身近にひそむ有毒植物|ナガミヒナゲシ等に注意!

春の訪れとともに、桜が散りはじめ、道ばたや庭先にも色とりどりの草花が咲き始めています。散歩中に野草を摘んだり、お子さんと一緒に花束を作ったりするのが楽しい季節ですよね。
でも、ちょっと待ってください!
実は、身近にある植物の中には「触れるとかぶれる」「毒性がある」といった“要注意”なものもあるんです。特に皮膚の弱い方や小さなお子さんは、知らずに触ってしまうと肌トラブルの原因になることも。
少しの知識があるだけで、安全に自然を楽しむことができます。 この記事では、身近な場所に生える有毒植物を紹介します。野草や花に手を伸ばすその前に、「これ、大丈夫かな?」と気をつけるきっかけになれば幸いです。

なぜ植物には毒があるのか

植物に毒があるのは、虫や動物から自分の身を守るためだと考えられています。
たとえばジャガイモの芽に含まれる「ソラニン」は、芽や未熟な実を食べられないようにするためのものです。
でも中には、特別に身を守る意図がなくても、人間にとっては有毒な植物もあります。たとえば「トリカブト」や「キョウチクトウ」は見た目が美しいのに猛毒を持っています。つまり「きれいな花」「美味しそうな実」でも安全とは限らないのです。見た目にだまされず、知らない植物にはむやみに触らないことが大切です。

カワイイのに毒がある!? 身近な有毒植物

街中や庭、公園など、実はけっこう身近に生えている「毒のある植物」。いくつかピックアップしてご紹介します!

■ナガミヒナゲシ

【有毒成分:アルカロイド】
ポピーのような見た目のオレンジ色の花。きっと見たことありますよね?
この花、実は1960年代に東京で見つかってから全国に広がった外来種で、根から周囲の植物を枯らす成分まで出してしまうという“生態系クラッシャー”なんです。さらに、茎や葉を傷つけると出てくる黄色い汁に「アルカロイド系の毒」が含まれていて、触るとかぶれたり皮膚がただれることも。
素手で摘んだりせず、駆除する際も手袋必須です!

毒があるとは知らず、花が可愛らしいので素手で摘んで花瓶に飾ったりしていました。

■キョウチクトウ

【有毒成分:オレアンドリン】
キョウチクトウは花が咲いて美しく、排気ガスや大気汚染にも強いため公園や緑地、また庭の緑化樹として多く栽培されています。花はピンクや白で、6~8月に咲きます。キョウチクトウの木全体に含まれるオレアンドリンという成分は少量であれば薬とされることもありますが、致死量は体重1kgに対して0.30mgと少量で効果絶大。なんと青酸カリの1000倍の強さです。
特に注意が必要なのが、剪定した枝などを処分するとき。キョウチクトウの毒は乾燥しても効果を発揮するため、火にくべてしまうと煙に混じった毒を吸い込んでしまいます。

とてもきれいな木ですし、よく見かけます。

筆者は以前アニメで、キョウチクトウの毒を扱うシーンを見て「怖いなー」と思っていましたが、まさかこんなに身近な植物だったとは…。

参考:テレビアニメ「モノノ怪 鵺(8,9話)」に登場します!
https://lineup.toei-anim.co.jp/ja/tv/mononoke/episode/

■レンゲツツジ

【有毒成分:グラヤノトキシン、ロトジャポニン】
ツツジの花を摘んで蜜を吸ったことがある人も多いかと思います。多くのツツジは毒がありませんが、レンゲツツジは有毒です。レンゲツツジが持つ毒は、痙攣を引き起こし呼吸停止に至ることもあります。注意が必要な点は、毒がない他のツツジと見分けるのが難しいこと、庭木などで身近に植えられていることです。
間違えてレンゲツツジを口にしてしまうリスクを考えると、ふつうのツツジの蜜も吸わないほうがよさそうです。

また、ヒョウモンエダシャクというきれいな蝶のような蛾は、幼虫のときからレンゲツツジを食べて自分の体も「毒化」させ、鳥などの外的から身を守るそうです。毒を摂取して自分も毒になるちょうちょ…藤ではないですが、「鬼滅の刃」のキャラクター、胡蝶しのぶさんを思い出しちゃいますね!

蜜は吸わせるために甘いんじゃないのかい、毒なのかい。

■ワルナスビ

【有毒成分:ソラニン】
気の毒な名前です。ワルナスビ。
ナスやジャガイモのような花をつけ、黄色く小さなトマトのような実をつけます。食べてみたくなりますが、特に実にソラニンという毒が多く、これはじゃがいもの芽にも含まれる成分で、人間には嘔吐や呼吸困難の症状が出るため危険です。その上葉には棘があってうかつに触れず、刈っても抜いてもばんばん増えます。うーん、ワルナスビ!

このワルナスビが!…って、名前だけでなかなの悪口

参考:国立環境研究所・侵入植物データベース
https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/80320.html

誤食の恐れがある有毒植物

山菜や野草って独特の風味や味わいがおいしいですよね。でも、食べられる野草によく似た毒草があるので要注意です!

■ドクゼリ

【有毒成分:ポリイン化合物(シクトキシン類)】
ドクセリの花は真っ白なレースのように可愛らしく、食べようと思わなくても摘んで生けたくなる見た目です。そして花が咲く前はセリ、ガマ、ワサビなどに間違えて食べてしまう場合があり、嘔吐、痙攣、意識不明になるなど重い症状が出ます。また、毒は根、茎、葉、花、全体に含んでいます。

知らなかったら摘んで飾って、押し花にもしてるかもしれません。

参考:厚生労働省「自然のリスクプロファイル 高等植物:ドクゼリ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082096.html

■スイセン

【有毒成分:リコリン、ガランタミン、タゼチン】
スイセンをスイセンと思って食べる人はいないかと思いますが、「葉をニラと間違って」、「球根を玉ねぎやニンニクと間違って」食べてしまう場合があります。
家庭菜園で近くに植えてあったり、買って置いてあるものを家族が間違って調理してしまうほか、直売所で山菜としてニラと間違えて採取したものが売られていた、などで口にするケースがあるので注意しましょう。
葉の場合はニラと違って、刻むときに粘りが出るので注意していれば違いが分かります。

花が咲いていれば間違えませんが、葉だけだとあやしいです。

参考:厚生労働省「自然のリスクプロファイル 高等植物:スイセン類」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000075843.html

■トリカブト

【有毒成分:アルカロイド(アコニチン、メサコニチン、ヒパコニチンなど)】
トリカブトは根1gでヒトの致死量になると言われている有名な有毒植物で、青い花が特徴的です。では、何と間違えてたべることがあるのか?
それは「ニリンソウ」です。
ニリンソウの葉は乾燥させて肉料理に使うと肉の臭みを消し、旨味を増すそうです。マンガ「ゴールデンカムイ」のキャラクター・アシㇼパさんお気に入りの野草で、「肉の味を何倍にもするだけでなくお互いの味を引き立てる」としています。しかしこのニリンソウ、作中でもトリカブトと間違えるシーンがあるのです。

なぜ間違えるのか?
それはトリカブトとニリンソウは葉がとてもよく似ているからです。ニリンソウは白い花が咲くので、花が咲けば青いトリカブトと間違えることはありません。ですが、花のない春の時期は要注意です。特に乾燥させてしまうとより区別がつきづらく、採取してから日数をおいて誤食してしまうこともあります。

トリカブトは誤って食べてしまうと嘔吐、酩酊状態となったのち不整脈や昏睡し、心停止によって死に至る場合があります。肉の味を倍にしたくても、花のない時期はやめておきましょう。

青い花のトリカブト。
白い花のニリンソウ。葉がよく似ています。

参考:厚生労働省「自然のリスクプロファイル 高等植物:トリカブト類」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082103.html

■スズラン

【毒性:コンバラトキシン】
スズランなんて食べることないでしょう!いえいえ、似ている野草があるんです…。
それがギョウジャニンニクです。花が咲けば一目瞭然ですが、葉の段階ではめちゃめちゃ似ています。ギョウジャニンニクは人気の野草で、道の駅などで売られていることもありますよね。筆者は醤油漬けにしてご飯と食べるのが好きです!
じつは筆者もちょっと間違えたことがあります。ある日大好きなギョウジャニンニクが、近所の植木鉢に植えられていました。粋な家庭菜園だな~と思っていたのですが、そのうち白い花が咲いて普通にスズランでした。もし山で見かけたら、間違えて採ってるな…と思います。

スズランの毒であるコンバラトキシンは水溶性のため、切り花を生けた水の誤飲でも重篤な症状を引き起こします。ヒトが摂取すると、嘔吐、頭痛、めまいと血圧低下、最悪の場合は心臓麻痺から死に至ることもあります。 庭の手入れなどでスズランを切った葉物はよく洗い、ほかの野菜類を収穫する際に汁が付かないように注意しましょう。

かわいいスズラン
これはギョウジャニンニク。

要注意!!触れてはいけないドクウツギ

【毒性:コリアルミチン、ツチン、コリアリン】
これまでの毒草たちも恐ろしいのですが、「ドクウツギ」は別格です。
筆者は小学校の林間学校でドクウツギがある場所に行く前にさんざんその怖さを叩き込まれました。ドクウツギの別名は「イチロベエゴロシ」「ネズミゴロシ」「オニゴロシ」など必殺の名前ばかりが付いています。
毒成分が非常に強く、中枢神経が刺激され嘔吐の後全身が麻痺して最悪の場合死に至ります。特に実が猛毒なのですが、とてもきれいで触ってみたい、おいしそうな見た目をしています。ある注意喚起の看板には「もし2~3粒ほど口に入れると甘くおいしいと感じているうちに苦しみ最後には死に至ることもある猛毒の実です」との記載があります。必殺の毒を持つほど食べられたくないのに、何のために甘いのか?ドクウツギの気持ちがわかりません。

猛毒の木のため基本的には注意喚起がされているかと思いますが、遭遇した時には注意してください。特に実は、初見で子供なら100%触っている、と思うくらい魅力的です。

参考:南魚沼市「有毒植物による食中毒に注意しましょう」
https://www.city.minamiuonuma.niigata.jp/docs/1048.html

食物で、植栽で、私たちの生活を豊かにしてくれる植物ですが、シリアスな毒を持っている場合も多いので注意しましょう。「きれい=安全」ではないのが植物の世界。知らない植物は、まず触らず・口にせず。これが鉄則です!
安全なお散歩ライフを楽しみましょう♪


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