ブドウの雨対策、高温障害対策!果樹棚にはトンネルメッシュ!
近年シャインマスカットやクイーンニーナなどの人気の品種が続々生産されているブドウ。諸説ありますが、古くは奈良時代にシルクロードで唐を経由して日本に伝わったとされています。遠いエキゾチックな響きを持つシルクロードですが、実はその交易品が奈良の正倉院に宝物として収められてきました。また、薬師寺にある薬師如来の台座には、ギリシャの葡萄唐草の装飾が施されており、異国から伝わったブドウの片鱗を見ることができます。
そんなブドウも、今では日本生まれの品種が数多く栽培されています。ただし本来は湿気が少ない地域の果物のため、品種改良がされたブドウでも、「雨対策」は必須の果物です。

ブドウに必須の果樹棚
ブドウの木の仕立ては環境によって異なります。地中海地方やヨーロッパ等の乾燥した地域では幹を太く低く仕立てることが多いです。一方日本では湿気対策のため、人の背丈ほどの棚を作って栽培するのが一般的です。ブドウ棚の高さは作業がしやすいように、生産者の背丈に合わせます。
果樹棚が必要な植物の代表がブドウですが、他にもキウイフルーツ、アケビ、パッションフルーツなどのつる性果樹、スモモ、ナシ、イチジク等の果樹を棚に仕立てることが多いです。また、最近では生産性の向上が図られ、果樹棚の仕立てについても次々と新しい方法が施策されています。ブドウでは、Y字に仕立てる棚で上向きの作業を減らすなど、軽労・省力化の策が各地で工夫されています。
このような棚の設置には労力がかかるため、棚設置の専門業者に依頼すると、メンテナンスもしやすくておすすめです。とはいえ自力で設置する場合よりも費用が掛かるため、「農地利用効率化等支援交付金」など国の補助金利用も検討しましょう。

東京戸張では、補助金申請から棚の設置施工まで、まるっとお手伝いいたします!
参考:群馬県「低コスト・省力化が可能なブドウY字樹形の開発」
https://www.pref.gunma.jp/uploaded/attachment/46038.pdf
参考:農林水産省「農地利用効率化等支援交付金」
https://www.maff.go.jp/j/keiei/keikou/kouzou_taisaku/index.html
ブドウの「天敵」、雨!
果樹の枝を広げて支えることが目的の棚には屋根がありません。しかし、棚栽培の果樹の中でも、ブドウは特に雨対策が必要な果物です。
多すぎる雨はブドウにどんな影響を及ぼすのでしょうか?

①実割れ(裂果)する
根や果梗から取り込む水分が過剰になると、果実の膨張に果皮が耐えられなくなり割けてしまう現象で、多くは収穫目前で起こってしまいます。
巨峰、藤稔、ピオーネ、安芸クイーンなど、粒が大きくなる四倍体品種では特に注意が必要です。また、デラウエアなどの果実が密着する品種では、密着する部分の皮が弱くなり裂果する場合があります。
対策としては、雨が果実に当たることからの吸水を防ぐことがあります。また、圃場の水はけに問題がある場合はビニールシートを敷設して雨水の吸収を防ぐ、冠水してしまう場合は畝立てをして水の流入を防ぐ等の対策が必要です。

②病気にかかる
ブドウがかかる病気は多々ありますが、ほとんどが雨媒伝染とされています。中でも「べと病」「灰色かび病」「晩腐病」のは指定病害虫とされています。また、その対策で薬剤を散布しても雨で流されてしまわないよう工夫が必要です。
・「べと病」 … 葉、幼果に発生し、黄変、落葉、幼果に灰白色のカビを生じます。5~10月の曇雨天が続くと、雨滴によって跳ね上がった病原菌が葉裏の気孔から侵入します。
・「灰色かび病」 … 菌に感染すると花穂、果実が腐り黒褐色に軟化します。開花時期に降雨が続くと感染しやすいですが、成熟期に雨が多く裂果実した果実から発病した場合、隣接した果実に連続して伝搬します。
・「晩腐病」 … 病果は成熟期に腐敗し、干しブドウ状になって表面に胞子を生じます。病原菌は菌糸の状態で越冬し、梅雨時に胞子を形成して雨で広範囲に伝搬します。

参考:佐賀県「4)果樹(ぶどう・かき他)の病害虫防除 – 佐賀県」
https://www.pref.saga.lg.jp/kiji003101845/3_101845_up_qk6jkh0i.pdf
3.ブドウの高温障害とは?
近年の日本列島では気温上昇によってさまざまな植物で高温障害が出ており、ブドウも例外ではありません。ブドウの高温障害とはどんなものでしょうか?
①葉焼け
高すぎる温度と直射日光によって、葉が水分不足になって組織が乾燥してしまいます。葉焼けを起こした部分は光合成を行えなくなってしまいます。

②着色不良

巨峰、ピオーネなどの黒色品種のブドウは、日中に光合成したエネルギーを使い、夜間に果皮を色づける色素である「アントシアニン」の合成して果皮を着色させます。しかし、夜間に高温の状態が続くと、アントシアニンの合成が阻害されて着色不良を起こしてしまいます。着色不良によって外観が悪くなると商品価値が落ちてしまい、収入減に影響してしまいます。
③果実の日焼け
ブドウの果実は、果肉部分の柔らかい「柔組織」と、果皮の「表組織」の2つで構成されています。「表組織」には「ワックス層」という層があり、「柔組織」を乾燥や紫外線から守る役割をしています。しかし、高温の状態になると「ワックス層」が変質してしまい、「柔組織」の水分を留めおくことができずに果実がしぼんでしまいます。

④糖度の低下
高温になると、光合成したエネルギーが転流阻害を起こす場合があります。また、ブドウの呼吸量が増加することによって自らエネルギーを消費してしまい、果実に蓄積される分の糖分が減ってしまいます。
参考:「(研究成果) 温暖化に伴う、ブドウ着色不良の発生拡大を予測」
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nifts/131026.html
雨対策にも、高温障害対策にも、トンネルメッシュが役立ちます!
ブドウ栽培には一般的に果樹棚を用いるということを記しました。この果樹棚はそのままでは屋根がないため、直射日光も雨も当たり放題です。そんな果樹棚に、傘のように後付けで簡易に設置できるのが「トンネルメッシュ」なのです!
また、トンネルメッシュは重量2~3kg(サイズにより変動)と軽量を果樹棚に設置・固定するだけで、ご自身で作業可能です。施工の人工が要らないため導入コストは安価と言えます。

トンネルメッシュの形状
トンネルメッシュは亜鉛メッキ加工を施した鋼線を網目状に溶接し、アーチ形状にしたものです。これを棚の上に載せて天井のようにし、ビニールなどの被覆をかけて使用します。4種の型があるので、樹形や品種に合わせたサイズを選定しましょう。

B-Ⅱ型は縦の線材がアーチの内側溶接されていて、被覆を引っ掛けにくい形状です。
雨対策に
トンネルメッシュにビニールで被覆することで雨除けになります。被覆はハウス用バンドや、被覆材用のクリップで留めておきましょう。また、メッシュ自体はそれほど風の抵抗を受けないため、使用しないときも外すのは被覆だけで問題ありません。固定はしっかりしておきましょう!




高温障害の対策にも
地域によって異なりますが、7月上旬ごろからの強い日差しに対しては、トンネルメッシュに寒冷紗を被覆することで直射日光を緩和できます。とはいえ光合成の阻害はさせたくないので、使用する場合は白い寒冷紗(遮光率20~30%)のものを選定しましょう。日照不足に注意しながら、日差しの強い時間帯に使用するなど、葉焼けによる光合成の阻害されないよう対策をしましょう。
イチジクにも!でも、ちょっと大きすぎるな…という時は
ブドウ棚の仕立て方によって、またはイチジク等の使用ではトンネルメッシュが大きすぎるという場合があります。そんな時は「ワンタッチメッシュ」も有効です!トンネルメッシュとサイズや、取付が簡易な点など多少の違いがありますが、用途は同じのため詳しくはお問い合わせください!

なにから始めたらよいのか?困ったら!
近年、これまでとは違った温度上昇が起きている地域が多いかと思います。そして残念ながら、日本では今後も気温が上昇する地域が増える見込みのため、これまでの雨対策に加えて高温障害の対策も向き合っていかなければならない問題です。
年々変わる気象条件に対して、既存の果樹棚をベースに省力を兼ねた機能を加えたい方、または栽培品種の変更で棚を新設を検討される方もおられると思います。今の圃場に何をしたら省力化できるのか?わからないことがあれば是非!ご相談からでも東京戸張にお問い合わせください。
お問い合わせ・お見積り
◆ お電話からのお問い合わせ
【東京戸張 農産事業部】
・仙台営業所:022-261-0991
・東京営業所:03-5405-1081
・愛知営業所:0533-68-7155
・岡山営業所:086-244-3112
・福岡営業所:092-722-2770
・鹿児島営業所:099-210-0974
※最寄りの営業所へお問合せください。
◆ メールでのお問い合わせ


