わたしたち人間が育てるおいしい作物、それは鳥にとっても魅力的な食糧です。日本における野生鳥類による農作物の被害は、令和4年度で約28億円、直近5年程度で30億円前後の横ばいの被害額です。鳥といっても様々ですが、一様に他の動物に比べて視力・学習能力が高く、飛んで移動するために侵入を防ぎにくいという特徴があります。そのため、一度食べ物があることがわかると学習し、繰り返し被害を出すため、農業の収穫量・モチベーションがともに低下してしまう恐れがあります。では大切な作物を、野性鳥類から守るにはどのように対策すれば良いのでしょうか。
鳥の種類、作物の種類による被害の傾向
被害を受ける農作物の種類は、昭和後期ごろまでは水稲が最も多いといわれていました。現在は状況が変わり、果樹・果実が全体の44%、野菜類が35%となっています。鳥の種類別の被害は、カラスが最も多く49%で、被害額にして13.4億円にもなります。次いで16%のカモが4.3億円。その他の鳥類ではヒヨドリ、ムクドリ、スズメ、ハトなど、誰しも見たことがある鳥たちです。
参考:全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(令和4年度)
https://www.maff.go.jp/j/press/nousin/tyozyu/231128.html
被害にあう作物は時期、鳥によって異なります。
【稲、麦、大豆、トウモロコシなどの豆・穀類】
被害の時期:播種~生育期~収穫期通して
加害鳥:カルガモ、カラス、スズメ、ハト類など
【トマト、スイカなどの果菜類、かんきつ類、その他果実】
被害の時期:収穫期
加害鳥:カラス、ヒヨドリ、ムクドリ、スズメなど
【ブロッコリー、小松菜、キャベツなどの葉茎菜類】
被害の時期:冬季
加害鳥:ヒヨドリ、カモなど
参考:野生鳥獣被害防止マニュアル【鳥類編】
https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/manyuaru/manual_tyourui/tyourui.html
また、新芽を折って巣を作る材料にするオオバンや、カルガモ・サギ類が作物を踏みつけてしまうなど、食害以外にも鳥の行動が収穫にマイナス要素として影響することがあります。
鳥対策には視覚!?
鳥による農作物の食害防止には、鳥の身体能力と、学習能力を考慮して対策する必要があります。
鳥類の多くは視力が良く、カラスで人間の5培の視力があると言われており、他の鳥も、五感のうち視覚が最も発達しています。一方嗅覚、味覚については人間より劣り、エサを探す際は視覚に頼っています。聴覚も人間と大差はなく、人間に聞こえない超音波で追い払う!ということもできません。
また、伝書鳩や渡り鳥は地磁気で飛ぶ方向を知っていますが、日常の行動範囲は視覚に頼って飛ぶため、磁石で行動を狂わせることはできません。よって、エサとなる作物を見つけさせない、危険と思わせるには、五感の中では「視覚」に訴えるのが効果的です。
【視覚で追い払う道具類】
・吹き流し、防鳥テープ
・CDなどきらきらしたもの
・かかし
・鳥の死体に似せたもの
これらは、「見慣れないもの」として警戒させることで追い払う効果があります。警戒させるという意味では、「聴覚」音でびっくりさせることも効果的です。
【聴覚で追い払う道具類】
・爆音機
・センサー付きの発音気
・鳥の悲鳴の録音を流す
参考:野生鳥獣被害防止マニュアル【鳥類編】https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/manyuaru/manual_tyourui/tyourui.html
鳥最大の武器
鳥の五感のうち、最も優れた感覚は視力と記しました。ゆえに視覚に特化した道具は、鳥を警戒させて追い払う、という意味で有効です。しかし、鳥の最大の武器であり他の動物よりも優れた点は「学習能力の高さ」です。鳥の学習能力に対抗することは、防除において最も難しい点です。視覚や大きな音で一時は追い払うことができますが、たいていの状況には10日前後で「慣れて」しまいます。
常に被害を防ぐには
学習能力が高い鳥類の防除には、「慣れにくい」対策、または「物理的な進入を防ぐ」ことが必要です。
【銃器捕獲とモデルガンの組み合わせ】
猟友会などに協力してもらい、銃器を用いて鳥を捕獲します。いくつかの個体を捕獲することで「ここでは死ぬかもしれない」と植え付けたうえで、区別しにくい見た目のパトロール隊がモデルガン等で威嚇射撃をすることで、カラス等を長く警戒させます。
参考:平成21年3月版「野生鳥獣被害防止マニュアルイノシシ、シカ、サル、カラス(捕獲編)」P104-107
https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/manyuaru/old_manual/manual_hokaku_old/data3.pdf
ダイレクトで有効な方法ですが、人手を要するため、すべての畑で行える対策ではありません。
【吹き流し、防鳥テープ】
視覚に訴える対策にも記した方法です。きらきらとしたテープは警戒されますが、いずれ慣れてしまいます。ただし、テープの張り方を工夫し、鳥の進入・羽ばたきを阻害するように張ることで効果が増します。
【防鳥ネット、防鳥棚】
最も効果的な方法です。果樹・作物に防鳥網を張り、鳥の侵入を物理的に防ぐため確実です。広い圃場への設置は費用面でデメリットとなることがありますが、防雹、防風、一定の虫害対策にも効果を発揮します。野菜類では1人でも張れるネットのほか、果樹には棚を作って囲う方法もあります。規模が大きい場合は補助金の対象となる場合もあるため活用しましょう。
東京戸張でできること
鳥対策、まずは安価に手早くできるテープやかかしで対策をしましょう。しかし、賢い鳥はいずれ慣れるもの。美味しい作物は鳥だって食べたいのです。それでも、長い月日をかけて育て上げた成果をつっつくことは許せませんよね。
東京戸張では防鳥網をはじめとした作物を守るネットの販売、果樹棚やハウスの施工を承っております。創業80余年のノウハウで、様々な圃場に対応可能です!
作物にかけた手間が収穫時にきちんと返ってくるように、永く営農していくために、東京戸張にお手伝いできることがあればぜひご相談ください!