【防霜ファン】送風法による霜害対策
2021年4月、福島県内15市町村で農作物に凍霜害が発生しました。
被害面積は530ヘクタール、被害額は約10億8000万に上り、過去2番目の被害額となっています。山形県では霜害でサクランボ収穫量3割減の少なさと東北地方全体での霜害となっています。
福島県では霜被害の拡大を防ぐ為に防霜ファンを導入し、農家様の果樹園を霜害から守る対策を行っています。また、東北地方全体でも来年度に向けて防霜ファンの導入の検討を始めています。
霜害の発生しやすい時期と気象条件
■春、秋の移動性高気圧に注意
霜害は主に高気圧による夜間の急激な冷え込みによって引き起こされます。
高気圧の特徴として「雲が少なく、風の弱い状態」が続きます。この気象下では夜間から早朝にかけての「放射冷却」により地面付近の温度が大幅に低下し、霜害の原因となります。
夏場も高気圧が続きますが、この時期は太平洋より運ばれる湿気が放射冷却による気温低下を押さえこみ、大きな気温減少へと繋がりません。このため霜害が発生しやすいのは、移動性高気圧が日本列島を横断する「春先の3~4月」と「秋口の10~11月」となっています。
■放射冷却による「逆転層」が生じやすい
放射冷却とは、地面が熱を空気中に排出することで冷える現象のことです。
「夜は放射冷却がおこる」と思われがちですが、実は放射冷却は一日中起こっています。ただ昼は太陽光が地表を温める力の方が強く、温度が急激に下がることはありません。しかし夜になると太陽が隠れているため、地面からの放射冷却が一方的に行われている事になります。
通常、地面に近づくほど気温は高くなりますが「雲が少なく、風の弱い夜間」は地表8~10メートルの高さで地面から放射された熱が冷気にフタをしてしまうことがあります。
この状態では通常時と異なり、地表近くの気温が低くなることから「逆転層」と呼ばれています。この逆転層が霜ができる最大の要因であり、逆転層を解消することが防霜ファンの大きな役目です。

■霜の発生しやすい気象条件
霜の発生しやすい条件をまとめると以下のようになります。
・高気圧により晴天が続いている
・夜間を通じて快晴または晴で上空に雲がない、または少ない
・無風または、風が弱い
・夕方の温度が比較的低く、明け方に地表温度が0℃を下回る
植物も放射冷却をしている
地面と同様に、植物も放射冷却を行っています。さらに植物の表面は薄くて水分が多いこともあり、温度が下がりやすく、露点(0℃)を下回るとすぐに結露してしまいます。特に凍霜害の起こる日の夜間は、植物体温が周囲の気温よりも2~4度程度低いと言われています。
自然風速が弱くなると植物体温と周囲の気温の差は拡大されます。植物体表面に形成される境界層が空気による熱伝達に強い影響を持つ為です。(霜害危険性の判断には気温だけでなく風速にも留意しなければいけません)
植物の耐凍性
霜害は植物の耐凍性(安全限界温度)以下の低温で発生、組織を凍結させ破壊した結果発生します。
・細胞内凍結→冷却が急速に進む→凍結枯死
・細胞間隙隙凍結→冷却が比較的ゆるやか→脱水症状
・植物体の耐凍性が成長ステージの進行により低下します。
防霜ファンの必要性
今までは、果樹の防霜対策として重油等を一晩中燃やす燃焼法が普及していました。燃焼資材に加えて多目的防炎網の設置により、網被覆での果実温の低下を防ぐ、燃焼資材の熱を逃さず、気温低下を防いできました。ですが、深夜での燃焼作業等、労働力の問題が挙げられると思います。
防霜ファンが霜を防ぐメカニズム
■植物体温の低下防止
放射冷却と同様に植物も熱を放射しており、植物体温(表面温度)が気温よりさらに1~2度低くなることが確認されています。防霜ファンにより、逆転層にある暖気を送ることによって冷気を攪拌し、外気との温度格差を少なくすることで植物体温の低下を防ぎ、防霜に寄与します。
■解凍暖徐作用
凍霜害の中で特に作物へのダメージが大きいのは、朝日により凍結した作物が急激に解凍されるタイミングです。日の出後の急激な気温の上昇によって、一旦凍結した組織(細胞)が急激に解凍されるとその組織は破壊され、枯死してしまうケースも少なくありません。
日の出後も防霜ファンで風を送る事によって、植物体温の急上昇を抑制し、ゆっくりと霜を溶かす事により組織の破壊を防ぎ、被害を軽減します。
■気温上昇作用
霜が降りるような夜は、放射冷却によって地表の熱が奪われて冷えるわけですが、その奪われた熱が地上高6~8mの所で地表の温度よりも2~5℃高い暖気層として存在し、冷気にフタをしています。防霜ファンはその暖気層(逆転層)の熱を吹き下ろすことで圃場の冷気を攪拌し、気温を上げることで降霜を防ぎます。防霜ファンは地表に近い「接地逆転層」の暖気を利用した、エコで効率のよい防霜法と言えます。

取扱い防霜ファンの特長
ここからは弊社取り扱いの防霜ファンのご紹介になります。標準的な防霜ファンと比較し、以下のような点を改良しています。
■特殊低騒音専用モーター
特殊低騒音専用モーターの採用により騒音をやわらげ、民家に近い場所にも設置が可能です。また低騒音ながらも、風の到達距離の長い大風量の規格もございます。
■ファンの向きの修正が容易
台風や予期せぬ強風などにより防霜ファンの向きが変わり、送風を行う範囲がズレてしまうことは少なくありません。適切なファンの向きへの矯正を簡単にし、ファンのズレによる防霜範囲の修正を簡素化しています。
防霜ファンの設計基準
■ファンの向き
ファンの向き、送風方向は気流の方向に合わせます。一般的には西から東に流れるよう設置するのが基本となり、その他特別な条件(霜穴、霧道、河川の流れなど)がある場合には調整を行います。
気流の方向に逆らうことは防霜ファンのおこした風を打ち消すことに繋がり、効果を薄めてしまいます。
■ファンの高さ、角度
ファンを取り付ける高さは、防霜ファンの設置個所で見られる逆転層の高さに応じ設定を行います。一般的に6~8mの高さとなりますが、採用したファンの種類に応じ微調整を行います。ファンの角度は基本的に地表面に対し45度の角度で送風されるよう設置されます。
■ファンの配置
ファンの配置は、それぞれのファンが前後左右のファンと協調しながら、各々がそれぞれのエリアを分担し、対象面に効果を発揮するよう計算します。又圃場内に設置する場合は、SS(スピードスプレーヤー)等の作業性も考慮した配置とし、隣接する民家がある場合は騒音等にも配慮します。
防霜ファンは、圃場の面積・形状によって設置台数が変わります。
防霜ファンの設置をご検討の場合、弊社営業担当が現地を確認後、設計をし、お見積を提出いたします。お見積りは無料ですので、お気軽に下記お問い合せ先よりご相談ください。
お問い合わせ・お見積り
◆ お電話からのお問い合わせ
【東京戸張 農産事業部】
・仙台営業所:0533-68-7155
・東京営業所:0533-68-7155
・愛知営業所:0533-68-7155
・岡山営業所:086-244-3112
・福岡営業所:092-722-2770
・鹿児島営業所:099-210-0974
※最寄りの営業所へお問合せください。
◆ メールでのお問い合わせ